89歳の「独身」を起点に、孤独・資産・家族不在という現実の痛みを冒頭で強く提示し、そこから“走馬灯の恋”へ滑らかに接続していく導入が印象的。虐待の記憶や周囲の無理解が、主人公の歪みや防衛として自然に積み上がっており、ただの不幸語りに堕ちないのが良い。デイサービス側の視点を挟むことで、死の匂いと日常の温度差が際立ち、読者の心拍を上げる。直登の軽さと優しさが、重い題材の中で救いとして機能し、二人の距離が“事件”から動き出す構成も次が気になる。