引きこもりの少年は異世界で森に引きこもる、はずだった。~幼馴染の聖女の為になし崩し的に異世界を連れまわされた件~
安ころもっち
第一章・異世界召喚
00.敵対者の襲来
日本とは違う世界。
それどころか地球ともかけ離れた全く異なる世界。
異世界。
俺はそんな世界でも、元の世界と同じように森の中に引きこもっていた。
そんな引きこもり生活を満喫していた俺の前にやってきたのが、懐かしく、そして二度と会いたくはなかった元クラスメイト達であった。
俺はその面々を吐き気を堪えながら睨みつけていた。
口内には、強く歯噛みした所為か鉄の味がしていた。
目の前のクラスメイト達は、まるでファンタジーロールプレイゲームのような鎧やローブを身に着け、俺の大切な場所を無遠慮に攻撃し続けていた。
「おい!また俺達が可愛がってやるから!今すぐここから出て来いよ!」
「俺達がこの森を有効に活用してやるよ!」
「そこの化け物蜘蛛!俺様の聖なる剣技で八つ裂きにしてやるよ!」
「そっちの狼は俺がやる!毛皮を剥いだら良い装備品になるだろ?」
俺の目の前には、クラスの不良グループの4人がこちらをいつものように笑いながら見ていた。
その一員だった矢沢がこちらを黙って見ている様子だったのが気にかかる。
矢沢のクラスは分析官?これが原因か?
「だめだよ!ここはきっと
幼馴染の志田
未波のクラスは聖女か……聖女様って呼ばなきゃならないか?
あまりにイメージとピッタリなクラスに笑いがこみ上げてくる。
未波と仲の良い女子4人も様子を伺いながら未波のそばへと集まってきている。
だが俺は、未波も、そのそばの子達も信用できず警戒しながら様子を伺っている。
「佐田!お前も人間ならその魔物達を倒して一緒に来い!俺がお前の事も導いてやる!」
クラスの優等生、勇者となったが飯田浩平が偉そうに命令する。
他にも明らかに俺のことを軽蔑した視線でこちらを見ている者達の視線に息苦しさを感じる。
「俺はここから出る気は無い。そして、お前達にこの場所を開放する気もない!俺からこの場所を奪う奴らを、俺は絶対に許さない!」
クラスメイト達に右掌を翳した俺は、[強制退去]のスキルを発動する。
未波達以外のクラスメイトに向かって強烈な突風が吹く。
「未波、それに他の女達も、あいつらと一緒に帰りなよ。ここが俺の居場所だから邪魔しないで。俺の事は忘れてくれていいんだ。向こうでもそうだっただろ……」
俺はそう言って未波を拒絶する。
「佐田君すまん。俺達にも立場ってものがあるんだよ。この任務をやり遂げるっていう責任もな!」
そう言いながら清水が放ったのは巨大な石柱であった。
清水は飯田と同じグループのモテ男だ。
清水のクラスは魔導士か……うらやましいステータスだ。
、そう考えながら拠点防衛スキルの[防壁]を発動する。
目の前に鉄の壁が出現するが、鋭く尖った石の柱により難なく貫かれ、危険を感じて身構える。
この世界に来て初めて死を覚悟した。
『カツキ、大丈夫かえ?』
俺を貫こうとしている柱は、怪我を負ったルリが必死で糸に搦め捕ると俺の顔の前で無効化されていた。
ルリがそれをクラスメイトの方へと投げ返す。
「ありがとうルリ、助かったよ。でも大丈夫なのか?足がそんなに……」
『この程度の傷、大丈夫じゃ。だが。不意打ちさえなければコガネと我で何とかなったものを』
そう言いながらルリがちらりとコガネを見る。
コガネは網状の何かによって動きを封じられているが、威嚇により他のクラスメイト達を近づけさせない様にしているようだ。
森の主でもあるコガネを動けなくするとか、あれは魔導具の類いなのだろうか?
『ちっ、あの犬っころめ。カツキのピンチだと言うのになんと役立たずな奴じゃ!』
「ルリ、コガネが庇ってくれなかったらルリがあの網の中だったんだよ?」
『それは、そうじゃが……』
ルリが気まずそうに少なくなった足をたたみ下を向く。
クラスメイト達は先ほどの反撃に悲鳴を上げながら腰を浮かせ、強制退去の突風に煽られ20メートル程後方に飛ばされていた。
誰であっても、もう二度と俺の居場所を奪わせる気は無い。
突風が止むと、飯田がこちらに向かってゆっくりと近づいてきた。
「これ以上近づくな!こっちも奥の手を使わなきゃならないからな」
飯田にそうハッタリをかます。
正直こちらに反撃の糸口は無い。
「佐田、すまない!俺には使命がある!俺を恨んでも良い!だが他の者達は恨まないでやってくれ!手加減はしてやる……できることなら、早めに降参してくれ!……聖なる魔力を糧に、放たれるは神の一撃……
戯言を言いながら飯田から放たれたのは天から降り注いだ強力な雷撃であった。
次の瞬間、残っていた拠点の城壁の大半が削り取られ消失していた。
俺もルリに庇われなんとか直撃を避けたが、その攻撃の余波により後方へ吹き飛ばされた。ルリが残り少ない脚で俺を抱きかかえ、俺を最後までを離さず守ってくれた。
脇腹に痛みを感じ目が霞む。
俺の視界には、笑いながらこちらに歩いてくる浜崎達が映った。
飯田の奴……多分だが俺と同じタイミングでこっちに召喚されたんだよな。さすが勇者、チートすぎだろ……
そう思いながらも一緒に近づいてくる浜崎達に必死に反撃をしようと手を伸ばすが、[防壁]も、[強制退去]も全てが易々と防がれてしまっていた。
これ以上動きたいが、体が自由にならない。
「また俺は、居場所をなくすのか……」
脇腹に張り付き治療をしていくれているスライムのアクアに手を添えながら、俺の意識が途切れようとしていた……
意識がはっきりとしない中、俺が生まれ変わったらあいつら全員ぶっ殺してやる……そう心に恨みを封じ込め、うっすら感じる光に向かいこの世界にまた生まれ変わる奇跡を切望し手を伸ばした。
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