第1章 鏡に潜む残響

第1話 鏡の向こう


街外れにある古びた洋館。手元にある依頼書に書かれている住所を前に私は息を飲んだ。


「……本当にここ……なの?」


玄関の扉を押せばギィっと軋んだ音が響く。廊下に入れば壁一面に古い鏡が並んでいる。私は少し息を整えてから足を進め、あるひとつの鏡の前へと立った。胸の奥がひゅっとなった気がした。


残響視ざんきょうし】。幼い頃から私にある過去の記憶や感情、残り香が視界に映る能力だ。普段はぼんやりとした色や光として感じる程度だけれどここは違う。


「っ……!」


鏡の中、ほんの一瞬だけ私の背後に知らない影が映った。私は勢いよく振り向くもそこには誰も居なかった。私は小さく息を吐き呼吸を整える。


「……大丈夫。ちゃんと私の"目"で確かめるんだから……」


そう自分に言い聞かせゆっくりと鏡に手を伸ばす。すると鏡の表面が波打ち過去の残響が視界へと押し寄せてくる。かなり断片的だがここで起きた出来事が私の目の前で浮かび上がる。まるで昔の記憶を鏡が映しているみたいだった


「……ちゃんと確かめないと。」


私はこの鏡に隠された怪異の真相を自分の目で確かめる。そう心に誓い調査を始めた。

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