穴熊家族の物語です

乾 未知(いぬい みち)

第1話 あなぐまアッキーの物語

ここ九州の、潮の香りがする海沿いの小さな町で、ボク、アッキーはのんびり暮らしていました。見た目は小型犬より少し大きくて、時々、夜に会った人にはタヌキやハクビシンと間違われちゃいます。でも、ボクはアナグマ! 


彼らと違って、ボクは木登りが苦手なんです。

木の実を採ったり、屋根を伝って移動したりできる彼らはちょっと羨ましいけど、ボクには木の上にはない、もっと素敵な世界があるんです。


ボクの名前の通り、「アナグマ」は穴掘りの名人! 大きな爪で土を掘りまくり、地下には迷路みたいな巨大な巣穴(セット)を作れるんです。

でも、ここ人里の住宅地では、家々の側溝がボクの最高のお城! 


特に道路の側溝は、しっかりフタがされていて、ボク専用の秘密の通路を兼ねた、安全な我が家なんです。そこは食料庫にもなるし、いざという時の非常口にもなってくれる、最高の場所です。


元々、ボクは土の中にいるミミズや昆虫、それにネズミやモグラなんかが大好物でした。

でも、ここ人里に来てからは、畑になっているスイカやメロンなどの甘いものが、

もう、だ〜い好き! 

トウモロコシはちょっと高い所に実っているけど、茎ごと力いっぱい押し倒せば、へっちゃらさ! 美味しいごちそうにありつけるんです。


夜のお散歩は最高に楽しい。でも、嫌いな奴もいます。

それは「犬」! 奴らはワンワン吠えてうるさいし、その上、犬のおしっこの匂い(ある成分がボクは苦手なんです)が本当に嫌なんです。


猫君たちとは、時々側溝の通路でバッタリ鉢合わせることもあるけれど、お互い「知らないふり」。適度な距離をとった、いい関係だと思っています。


ところが最近、大好きなスイカが食べられなくなってしまいました。

畑が、ボクの力じゃ壊せない、丈夫な網でグルッと囲われてしまっているんです。「ああ、近づけない! もっと食べたいのに!」


ある夜、いつものようにお腹を空かせて、エサを探してウロウロしていると、どこからか、ふわりと甘〜い匂いが!

「あれ? この匂いは! 大好きな匂いだ!」

ボクは匂いに誘われるまま、夢中でその甘い食べ物に飛びつき、ガツガツと食べ始めました。


すると、次の瞬間、後ろで「ガシャン!」という、大きな音が響きました。 「エッ!?」ボクはびっくりして振り返りました。

「あれ? 後ろの道(通路)がない? 何で!?」


そうです。ボクが飛びついた、美味しそうな餌の向こう側は、人間たちが仕掛けた「箱罠(はこわな)」と呼ばれる、大きな鉄の箱の中だったのです。

美味しい餌に夢中になっているうちに、ボクは気づかずに罠の中に入ってしまい、扉が閉まってしまったのでした。


可愛そうなアッキーは、そのまま、

朝になって人間たちに連れて行かれてしまい(終い)ました。


おしまい。



△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

AFTER

熊だけが害獣ではないです!

読んでくれてありがとう、今後も努力を忘れません

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