見つけたのは、君だった
@suyasuya_suisui
第1話
第一章添削案
中学三年の冬、ボクは許されないことをした。
どんなに償っても消えない罪。
誰に許されても、ボクだけは自分を許せない罪。
——これは、ボクしか知らない罪の話だ。
憂鬱な朝を乗り越え、いつもの通学路を歩いていると、背後から元気な声が飛んできた。
「おっはよー!」
振り返る間もなく、視界が暗闇に包まれる。
頭に布のようなものを被せられたらしい。でも、誰の仕業かはすぐに分かった。
「もう! 朝からやめてよ、なぎちゃん!」
手探りで布をつかんで引きはがすと、「してやったり!」と笑う彼女の顔が現れた。
「えへへ、ばれちゃった? 今日も朝からかわいいねぇ。ほんと、生きててくれてありがとうって感じ! あぁ、尊い尊い~!」
空を見上げて手を合わせる彼女は瑠衣波なぎ、僕と同じ高校一年生。
中学のころ転校してきて、明るくて何でもそつなくこなす彼女はすぐに人気者になった。
「もー、またそんなこと言って! 僕だって怒る時は怒るんだからね!」
そっぽを向くと、なぎは慌てて僕の手を握ってくる。
「ごめんごめん! だってせなちゃんかわいくて、つい悪戯したくなっちゃうんだよぉ~」
「だからって、毎朝そんなことされたら怒るよ!」
「そ、そんなぁ……」
項垂れたなぎに、僕はため息をついて、彼女にトートバッグを渡した。
「これ、なぎちゃんのでしょ? もっとちゃんと使ってあげなよ。せっかくかわいいバッグなんだから」
「でしょでしょ! この前、部屋のクローゼット掃除してたら見つけたんだ~」
嬉しそうにバッグを抱きしめる彼女を見て、僕はふと違和感を覚えた。
……よく見てみると、
そのトートバッグの端に、見覚えのある小さな刺繍があった。
「……あれ?」
思わず声が漏れる。
白地のキャンバスに、薄く色あせた糸で縫われた“S”の文字。
——間違いない。これは、ぼくが中学の頃に使っていたやつだ。
見つけたのは、君だった @suyasuya_suisui
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