第2話 いざ、ランチへ
起床時、緊張による腹具合の悪さを自覚し、第一三共胃腸薬を飲む。あるいは前日に食べたもつ鍋の脂にやられただけかもしれない。
手土産を持ち、普段よりは少し良い服を着て、髪の毛にアイロンを当て、エドワード・ゴーリーの背景みたいなお気に入りのシュシュで髪を結んで出勤。
仕事が終われば、すぐランチに向かう。待ち合わせは職場の最寄駅近くのカフェだった。
1年以上前に開店し、看板メニューにぐりとぐらの絵本みたいなパンケーキがあるので、気になっていた店だ。無論、一度も行ったことはない。私は冒険しないタイプだ。
到着すると、先輩はすでに店の前に待っていた。「私も今、来たとこだから」と笑う。
店内へ入り、席に案内され、上座を押しつけ合う。半ば椅子取りゲームみたいに下座に座れば、テーブルがあり得ないガタつき方をしており、カトラリーやお冷を手に、ふたりしてしれっと移動する。
多分、考え方が似ているのだ。
パスタランチを頼むことにするが、店員が一向にこちらを見ない。声を張り上げようか迷うが、品がないと思われるかもと躊躇ううちに、先輩が呼んでくれた。
下座奪取と注文挙手で一勝一敗。
ドリンクバーとスープバー込みで1000円は安いと、企業努力を褒め称えながら、それらを取りに行く。
落ち着いたところで、手土産を渡した。もう、これだけで今日はほぼほぼ成功と言える。
先輩は「やだ〜私何も用意してないよ〜」とか「またランチに誘えなくなっちゃう〜」とかいいながら、受け取ってくれた。
パスタは美味しく、話題は先輩が先月行かれたロサンゼルス家族旅行と、職場の愚痴であった。来月は伊豆に旅行らしい。スケジュール帳とはかくあるべきだ。
そろそろお開きという頃、「小鳥遊さんはお子さんもいらっしゃらないし、ご主人の転勤でこちらに来られたから、お友達が作りづらいんじゃないかと……私なんかでよければ、いつでも付き合うよ」と、ぼっちを完全に見透かされた発言を先輩に食らい、私はパスタに遅効毒でも入っていたのかと疑われるほど痙攣した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます