第2章1話 謎の放送
放課後。校舎の廊下は、夕焼けに染まり、誰もいないはずだった。
だが、突然――校内放送が鳴り響く。
「――Attention! Attention! 本日の放課後、重要なお知らせがあります! 全校生徒は、体育館に集合せよ!」
声の主は、普段聞き慣れた校内放送の声ではない。
しかも、音声は早口で意味不明な部分も多い。
生徒会室にいた碧と結も、思わず顔を見合わせた。
「これ……誰かが放送室を乗っ取ったってこと?」
「間違いないわね」結が冷静に言う。
「でも、なんで全校生徒に体育館集合させるの?」
「事件の匂いがプンプンする!」
二人は急いで放送室へ向かった。
廊下を走る途中、碧は小声でつぶやく。
「ゆい、これは推理するチャンスだよ。犯人の手がかり、絶対にあるはず」
「その前に、無事に生徒を混乱させないようにしようよ……」結は苦笑した。
放送室に到着すると、扉は施錠されていた。
だが、ドアの隙間から明かりが漏れ、中には誰かがいる気配がする。
「……どうする?」
「よし、作戦は二手に分かれる!」碧は目を輝かせる。
「碧、無茶しないでよ」
「大丈夫、任せて!」
碧は窓から忍び込み、結は正面から声をかける。
「放送室の中の人、出てきて!」
中から小さな物音がし、やがて扉がゆっくり開いた。
そこにいたのは――書道部の三年生、田村だった。
手にはマイクが握られ、顔は赤くなっている。
「え、あ、あの……皆に伝えたいことがあって……!」
「伝えたいこと?」碧が首をかしげる。
「うん、ただ……ちょっと誤解させちゃったみたいで……」
結と碧は顔を見合わせる。
この小さな放送室で、どんな事件が起きているのか――まだ全貌は見えていなかった。
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