ざまぁされるキャラに憧れた男、ざまぁキャラに転生する
琴珠
短編
目が覚めると、俺はゲーム「ソードファンタジー」の世界に転生していた。
転生したキャラは、主人公……ではなく、小者悪役王子キャラ「ダーク・ダークネス」であった。
ダークはいわゆる「ざまぁキャラ」である。
普段から周囲を見下す。
そして圧倒的才能のある主人公のことは当然気に入らないので、敵対する。
しかし勝てないので、ラスボスに魂を売り、最後は泣き叫びながら助けを求める。
だが、今までの行いから誰も助けようとはせず、そのまま死ぬのだ。
製作者視点だと、ヘイトを貯めてスカッっとさせる為に生まれたキャラでもある。
そんなキャラに、俺はなってしまったのだ。
嘘だろ……こんなことって……
「やったー!!!! 夢が叶った!!!!」
これは嬉しい誤算だ!
俺はざまぁキャラに憧れていたからな!
人をスカッっとさせ、無様に泣き叫ぶ!
そんなキャラに俺は憧れていた!
そして今の俺は15歳。
つまり、もう既に学園に入学した後だ。
この時期になれば、多くの人達に既に迷惑をかけているハズだ。
つまり! 早速無様な姿を見せてスカッっとさせることが可能という訳だ!
いいぞ!
俺は早速部屋を出ると、廊下を掃除しているメイドさんが目に入った。
「俺が悪かったあああああああああああああああっ!!」
俺は叫びながら、体の力を抜き、土下座をするように倒れ込んだ。
「ダ、ダーク様!?」
メイドさんは驚きの声をあげた。
スカッっとしたかな?
してるといいな、なんといってもダークは昔からメイドさんに対する態度がひどかったからな、きっとスカッっとしていることだろう。
「うわああああああああああああああああああっ!!」
「だ、大丈夫ですか!?」
「お、俺を許してくれるのか!?」
「えっと……え?」
「ありがとう! 俺なんてゴミだ! ゴミはゴミらしく破滅するよ!」
俺はその場を去った。
やっぱり、いいことをした後は気持ちがいいな!
俺はこの世界の元となったゲーム、ソードファンタジー略してSFをやり込んでいるからな。
ダークがこの時点でどれだけのことをしているのかも知っている。
俺はこの日から迷惑をかけた相手に土下座をしながら、無様に泣き叫ぶ日々を過ごした。
勿論、迷惑をかけていない相手でも、何か不快にしたことがあればすぐに土下座をして謝罪をするのも忘れない。
俺のスカッっと異世界生活はここから始まるのだ!
そして、半年が過ぎた時、父親である現国王に呼び出される。
「お前は次期国王なのだぞ? もっとしっかりしろ!」
「うわああああああああああ!! 俺が……俺が悪かったああああああああああああああああああああああああああ!!」
俺は泣き叫びながら、無様に土下座をした。
「それのことだ! 最近のお前はすぐにそうだ! 前のお前はそうじゃなかったぞ! 目を覚ませ!」
「ごめえええええええええええええええええええええええん!! ぼべえええええええええええええええええええええええええええええん!! ごべえええええええええええええええええええええええええん!!」
「お前は一般国民にもその態度だそうだな? いいか? お前は次期国王なのだ! もっとしっかり構えておけ!」
「はい……肝に命じておきます」
俺は立ち上がると、下を向きながらその場を去った。
我ながらいい感じだぞ!
だが、ここで大きな問題点があるということが分かった。
確かに物語通りに行けば、しっかりと無様な最期にありつけ、皆をスカッっとさせられる。
しかし、それには悪事を働かなくてはならないのだ。
そして、人が傷つくようなことをしなくてはならない。
でも、俺にはそんなことはできない!
「困ったぞ……」
悪事は働きたくないが、皆をスカッっとはさせたい。
一体どうすれば……。
そもそも……俺はどうして皆をスカッっとさせたいんだ?
ここで、俺の封じられた記憶が蘇る。
そうだ……俺がこうなったのは、俺には能力がなかったからだ……
社会に出てから皆に迷惑をかけ続けた結果、心が痛くて、気がついたら自分はそうしたくてそうしてるんだって、思い込むようになっていたんだ。
ずっといい子にしてたから、社会に出て、悪い人になるのが耐えられなかったんだ。
「俺には何ができる……?」
必死に考えた。
そして、数年が経過した。
「よぉ相棒! 元気にしてるか?」
SFの主人公である、セイギ・ヒーローが王宮へとやって来る。
「そっちこそどうなんだ? 魔王も討伐して、もう仕事もないんじゃないか?」
「ははっ、バレたか!」
セイギには俺の正体を全て話してある。
ゲーム知識を共有し、ラスボスである魔王を倒したのだ。
とは言っても、俺は本当にゲーム知識を提供しただけだ。
魔王の元へすら行っていない。
足手まといにまるからな。
実際、スライムを倒すのも一苦労だ。
「後、相棒はやめてくれ。俺はただ知っていることを話しただけだ」
「でも、そのおかげで勝てたんだぜ? そうだ、今日来たのはちょっとお願いがあってだな」
「なんだ? なんでも言ってくれ!」
「ああ! 実は俺仕事がないんだ。雇ってくれないか?」
「え!? だってお前、魔王を倒して一生遊んで暮らせるだけの金を貰ったんだろ? なぜ働く?」
「暇だからだよ! それとお前といると退屈しないしな!」
俺は元の世界では駄目な人間だった。
こっちの世界でも駄目な人間だったけど、役には立てた。
これから先、何が起こるかは分からない。
だって、シナリオが終了したのだから。
でも、きっと大丈夫だ!
俺には仲間がいるからな!
★★★★★
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ざまぁされるキャラに憧れた男、ざまぁキャラに転生する 琴珠 @kotodama22
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