モノフィラメント・ウィッチ

村山朱一

アナザーデイ・アナザーラン

第1話 魔法少女のお仕事

 行き過ぎた科学は、魔法と見分けがつかない。

 ――だから民衆は、を魔法と呼んだ。


『HQより【ストロベリーピンク】へ。【魔法】の使用を許可する』

「早いっすね。誰か死にました?」

『……【ヴィオラパープル】の通信が途切れ、Bブロックで爆発が起こった』


 ヒュウ、と少女は口笛を吹いた。

 いつもの夜アナザーデイいつもの仕事アナザーラン

 仲間が死んで、テロリストが勢いづいて、少女のはいつもそんな状況から始まる。だから今日も、ちょっぴりの寂しさと、胸いっぱいのわくわくを込めて、少女の可憐な声が夜空に響く。


「『其は安寧のため。其は静謐のため』」


 詠唱。

 浮遊するM粒子――魔力の輝き。

 少女の心臓に埋め込まれたメイガスエンジンが稼働し、桃色の光が摩天楼の空を染める。影が落ち、少女が、その中で姿を変えていく。


「『其は秩序のために之を鋳造し、力を振るうことを赦す』」


 黒のツインテールはピンクに染まり。

 学校帰りのピンクのパーカーは、飾られたドレスのように身体を覆う。


「『故に』」


 見開かれた瞳は桃色に輝き、星を散りばめたように瞬いて。

 詠唱紡ぐ唇は、少女の火照りを表すように彩られ。

 細い指をクローム鋼の手袋が飾り。

 解放された胸部から、棒が突き出す。

 白い指が、それを引き抜く。


「『汝に、罪は無い』」


 魔法サイバーデッキのステッキ。

 魔法サイバーウェアのドレス。

 細胞レベルで侵蝕し、髪と瞳を塗りつぶすほどに瞬く、魔力M粒子




「――【ストロベリーピンク】! 呼ばれて飛び出て参上さ!」




 少女【桃月 ハルカ】の仕事は、いつものように始まった。

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