一緒に

 わたし、魔女のアビゲイルはとても憧れていたのです。


 赤髪の方が双子の兄であるダン。

 青髪の方が双子の弟であるサミー。

 ふたりはわたしが予想した通り、口減らしとしてわたしの家があるこの森へと捨てられたようです。


「わたしはのアビゲイルです」


 わたしがそう言うと双子は同時に目をぱちくりさせました。きっと次の瞬間には泣き出すことでしょう。だって人間と魔女は昔から相容れない存在同士なのですから。

 しかし、またしてもわたしが予測した反応ではないものが返ってきます。


「サミー、アビゲイルは話で聞いていた魔女とは随分と違うな」


「そうですね、魔女は耳まで口が裂けた老婆で子どもを見つけたら直ぐに取って食らう……という話だったはずですが。このアビゲイルはまるで違う」


「ああ、親切でお人好しそうだ」


 わたしのことを怖がりもしないどころか、親に捨てられたというのに先程からあまりに平然とし過ぎていると思う。


「……あの、あなた達は怖くないの?」


 魔女わたしや捨てられたこの状況が……そういう意味合いで訊ねると、双子はまた同時にきょとんとしました。そうしてまたまた同時に口を開くのです。


「サミーが一緒にいるのに何を怖がるというのさ?」

「ダンが一緒にいるのに何を怖がるというんです?」


 ふたりは互いの腰に腕を回し、頬を合わせます。


「それにアビゲイルは全く怖くない。魔女としての威厳? とかそういうのがからな!」


「ぐっ!!」


 不意な口撃にわたしはよろめきます。


「アビゲイルにはドジでのろまそうな雰囲気が漂っていますからね。怖がる要素がありません」


 きつすぎる追撃にわたしは遂に両膝を床につきましたが、何故ここまでコケにされないとならないのでしょう!

 わたしは立ち上がり、双子を指差します。


「いいでしょう! ならばわたしは魔女の威信をかけてあなた達を絶対に泣かせてみせます! 覚悟して下さいね、ダン、サミー!!」


 するとダンとサミーは顔を見合わせてクスクスと嬉しいそうに笑いました。

 こうしてわたしはこのふたりを怖がらせる為、共に生活していくことを決めました。絶対に泣かせて、お漏らしさせてやるんだからと意気込んで。



 わたし、魔女のアビゲイルはとても憧れていたのです。

 ひとりぼっちで生きるのではなく、誰かと一緒に生きることを。

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