出会い


 わたし、メイドのアビーはその昔、家庭の貧しさ故に両親によって人買いに売られたのです。


 市場に商品として売り出されましたが、地味でのろまで可愛くもないわたしに買手がつくわけもなく、わたしの値段はどんどんと下がっていきました。

 売れ残ったわたしを人買いは面倒くさそうに見下ろして言うのでした。


「これならバラして売った方が金になるかもなぁ。黒魔術? だっけか? あれの儀式にはバラした人間が必要らしい」


 バラす、とはわたしの体をバラバラにするということです。勿論そんなことをされては死んでしまいます。

 わたしは必死に命だけはどうか助けて下さいと人買いにすがりつきましたが、人買いは力強くわたしの頬をはたきました。

 吹き飛んで床に転がるわたしを尻目に大きなノコギリを用意する人買い。わたしの命運もここで尽きてしまう……そう思った時でした。


「その子はぼくらが買い取ろう!」


「彼女の価値に似合うだけの額を用意しましたよ、お確かめ下さい」


 そう言って割って入ってきたのはわたしと同い年くらいの同じ顔をした男の子達でした。

 赤髪で勝ち気な雰囲気の男の子と青髪で落ち着いた雰囲気の男の子は机の上に札束の山を築いたのです。


「ひ、ひぇ……こんなに、」


 あまりの額に腰を抜かせて人買いに青髪の少年は言います。


「こんなに? 本当はまだ足りない位ですが、おれ達兄弟が自由に使える額は今の所この程度ですので」


 その物言いにわたしもぽかんとしてしまいましたが、そんなわたしに手が差し出されます。


「さぁ行こうアビー」


 赤髪の少年はニカッと太陽みたいに笑うので、わたしは空に手を伸ばすが如く彼の手をごく自然に握っていました。



 わたし、メイドのアビーはその昔、家庭の貧しさ故に両親によって人買いに売られたのです。

 そこでダニエルお坊ちゃまとサミュエルお坊ちゃまに出会い、命を救って頂いたのです。

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