ふたり【完】
雪音(Yuon)
第1話 聞いてくれるかい?
30代前半である黒縁眼鏡をかけた細長い男が、鼻歌を歌いながらコーヒーカップを二つ用意し、ひとつにはブラックコーヒーを、もうひとつには、砂糖とミルクを足し、お菓子と一緒にテーブルの上に置いた。
時計の針は15時を指している。
男は椅子に腰掛け、煙草を一本取り出すとマッチで火をつけ、煙を吐いた。
「昨晩、ミステリーを考えてみたんだ。聞いてくれるかい? あ、もちろん食べながらでいいよ。昨日は俺の好きなプリンだったから、今日は君の好きな紅茶クッキーを焼いたんだ。遠慮なく食べてくれ」
男は物語を頭の中で考えるのが好きであり、完成した物語を、お茶会の時間に大切な
それは、二人にとって楽しく穏やかな時間である。
煙草を右手に持ち、左手でコーヒーカップを持つと、湯気の立つコーヒーの良い香りが漂う。
男はふーっと息を吹きかけ一口飲むと、「ブラックは落ち着く。さて、話そう」と言って、コーヒーカップをソーサーの上に置いた。
「今回の話はね、外の世界に憧れる12歳の少年の物語なんだ」
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