第16話 『サポーター』の存在

「ふわぁぁぁぁぁああああ……あふ…」

大きな欠伸をしながら、学校に登校していた。眠くて仕方がないが、学校に行くことが俺の最初の仕事であるため、トボトボと歩いていた。

すると……

ドーーーーン!!

「ぐへっ……」

背中に強烈な衝撃があり、前のめりに倒れた。

「あ、すまん……」

「………」

俺は、チーンってなった状態で、目だけを後ろの方へ向けた。見えるわけじゃないが、声で誰がこんなことをしたのかすぐに分かった。

「大輝……てめー」

「し、しろうさ?!めっちゃひっくい声出てるよ?」

「……誰のせいじゃ!!!!!」

ゴッ……!!

「ぶっ……!!」

思いっきり殴って、吹き飛ばしてやった。

「いってー!!酷いぞ!しろうさ!」

「おめーが言うな」

朝からバカみたいなことをしていた。


教室に入ると、聞こえてくる言葉がある。それは……

「なぁ、前のライブで5大美女を庇った男子生徒って、あの5大美女の『サポーター』らしいぞ?」

「へぇー……『サポーター』って何するんだ?」

「なんか、支える役割だってよ、アイドルのスケジュールとか書類とか作る仕事らしいけれど……」

「え?それってマネージャーじゃねーの?」

「違うらしい……マネージャーはいるらしいけれど」

「その『サポーター』って、この学校の男子だよな?」

「だな」

「なら、ワンチャン俺らにも出来るんじゃね?」

「それ、言えてる!5大美女とお近づきになれるチャンスじゃん!頼んでみようかなー?5大美女に」

「いやいや、どうやって頼むんだよ…」

とまあこんな風に『サポーター』の話が話題になっている。

いや、いいんだよ?別に……噂されることぐらい覚悟してたから……

でもさ……

「そいつが誰か知ろうとするのだけはやめてほしいなー」

「いや、無理だろ」

『サポーター』の顔が見れなかったとして、学校中で探されているらしい。

新聞部の探してるらしく、5大美女に直接聞いてるやつもいるみたい。当然、話してないらしいが……

「すぐバレそうで嫌だ……」

「仕方ないんじゃねー?あんな舞台の上に堂々と立ち、アイドルを庇ったヒーローはいないからなー」

「うう……俺、余計なことしたーー!!」

「まあ、しろうさの性格考えたら、出ないわけにはいかないだろ」

「うう………俺、自分の性格嫌い」

「お前は子供か」

「子供ですよーだ、まだ16歳だー」

「はいはい………あ」

「何だよ…」

「しろうさ、あれ」

大輝が指を指した方を見た。そこには…濱中さんがいた。

「何でここに……当番、今日じゃないし」

「しろうさが目当てじゃね?」

「……絶対今来る時じゃない」

「まあまあ、ほら!行ってこい!」

俺は嫌な顔をしながら、ゆっくり歩いて濱中さんの元に向かった。


「濱中さん、どうした?」

「あっ……あの!」

「ん?」

「こ、この前のお礼を……!」

「待て待て待て待て!!一旦ストップ!」

「!!!」

俺が大声で彼女の言いたいことを遮った。そして、彼女に小声で……

「今、絶対言う時じゃない……」

後ろの方に目をやりながらそう言った。俺と濱中さんが大声で話したから、クラスの奴らがこっちを見ていた。

「放課後……いや、事務所で、な?」

「……は、はい!」

彼女も理解したらしく、大人しく帰っていった。

「ふぅ…」

安心して教室に入ると……

「えっと……」

男子が数人、仁王立ちで立っていた。俺を取り囲むように……

「雨宮…」

「な、何?」

「お前……」

ぐいっと近づいてくると……


「何でお・ま・え・が濱中さんと親しそうなんだよ!!」


「えっと……」

「濱中さんとどう言う関係だ!!」

「俺たちの天使に何した?!」

「濱中さんとあんな至近距離になるなんて…!

許せん!!」

何だろう…すごく嫌な予感がする…

「お前、濱中さんと仲良くしすぎだ!!」

男子の嫉妬のせいか、めっちゃ睨まれていた。

(め、めんどくせぇーー!!濱中さんと話したせいで、めんどくさいことになったーー!!)

「どうなんだ?!」

さらに、ずいっと近づいて圧力をかけてきた。

(こう言う時は……)

ダッ!!

「あっ!!こら待て!!」

男子達から逃げた。


「はぁ……はぁ……はぁ……じ、地獄だ」

男子達に俺と5大美女との噂が流れたら絶対めんどくさいことになるって目に見えていた。だって、話しただけで、追いかけられているのだから……

「はぁ……最悪」

もうしんどいって思いながら、屋上で休んだ。

すると……

「あ、いたいた」

「んぁ?……お前か」

屋上に現れたのは、新聞部のルーこと、稲巻 留優喜だった。

「噂になってるねー」

「はぁ……お前には分かるのかよ……俺がやったって」

「当たり前じゃん、瓶喰らってもピンピンしてるやつ、うさぎしか知らん」

「うへぇー……」

最悪だなーって思いながらため息をついた。

「で、何しにきたんだ?ルーは」

「ん?インタビュー」

「……受けません」

「何でだよ、話聞かせてくれよー、例えば、5大美女とどう言う関係になってるのか?とか、プライベートでも遊ぶ中なのか?とかさー」

「お前はそれを誇張して書くだろうが!」

「ジャーナリストですから……」

「いや、お前、ただの学生な?新聞部に入ってるだけの!」

「新聞部もジャーナリストですよ!」

「はぁ……お前にツッコミ入れるの疲れるわ」

「おやおや、アイドル達の子守りの方が疲れると思いますけれどー?」

「……こいつ」

ルーを睨みつけると、ルーはヘラっとした顔で俺の睨みをかわしていた。

「とにかく、話すことは何もない!とっとと帰れー」

「へぇー話さないんだー……じゃあ、お前がサポーターって言ってやろー」

「……好きにしろ、被害を受けるのは俺だけだからな」

「本当にそうかなー?迷惑かけると思うけれどー?」

「……言わないったら言わない」

「……あっそ」

ルーはつまらなさそうな顔をして、屋上を去っていった。


ルーがいなくなった後、俺は目を瞑り、これからのことを考えた。

(アイドルのライブは終わった。何とかいけたし、ファンもこれで増えるだろう……あとは、あいつら次第だが、学校ではしばらく大騒ぎだろうなー)

俺がサポーターだってことは多分すぐに知られる。だから、その時の対策も考えないといけない。

「ライブが終わっても落ち着けないなー」

はぁ…とため息を吐きながら、屋上を出ていった。


帰り道、俺はある人に呼び出されたため、会う場所に向かった。

「全く……話って何だよ、夏姉」

ため息を吐きながら大きなビルの中に入っていった。

30階建てのビルのエレベーターで15階に向かった。

エレベーターを出ると、1本道の通路があり、その先にドアがある。

コンコンコン……

「失礼します」

そのドアをノックし、中に入ると……

「……来てくれたのね、雨宮くん」

雅さんがソファーに座って待っていた。その向かいのソファーに、夏姉が座っていた。何だか空気が悪そうだった。

「あ、ああ、はい、呼び出されましたから…

それで、あの、何の用ですか?」

すると…

スッと夏姉が立ち上がり、俺の方を向くと、そのまま歩いて、俺に抱きついてきた。

「おわっと!!どうした?夏姉」

「……はーくん」

「へい」

「女の子と仲良くなってたでしょ」

「……はい?」

突然何を言い出すのかと思えば、女の子と仲良くなっていたと言う質問だった。

「いや、仲良くはなってないけれど…」

「……仲良く『は』?」

「怖いんですけれど…夏姉?」

「…はーくんは私よりその女の子がいいんだー」

「えっと……何で夏姉があのこと知ってんの?」

もう、夏姉が何を言っているのか分かった。多分、アイドル達のことを言っている。と言うことは……

「学校のライブで女の子守ったって聞いた」

「あー……」

もう理解した。ライブでアイドルの5人を庇ったこと、バレたということらしい。多分、母から聞いたのだろう。

「そりゃあー……まあ、サポーターだし、用心棒だし」

「………」

ぐぐぐっと俺の首にまわっている夏姉の腕の締め付けが強くなった。

「待て待て待て…夏姉!俺死ぬ!」

「……何で」

「???」


「何で!知らない女の子守ってんのよ!!はーくんは私だけを守ってくれたらいいのよー!!!」


まあ、これで分かるだろう。俺の姉、夏姉は重度のブラコンである。俺に女の子、または、女子の影があるのが分かると、こうやって呼び出しては、俺を締め付けてくる。ちょーーーこわい。というか、最早ホラーレベル。

「夏姉の護衛なんてしなくていいだろうが、誰かに襲われること早々ないし、雅さんと、事務所の人がいるだろうが!」

「いやいやいやいやいや!!はーくんがいいの!」

駄々をこねる小さな子供みたいに言い始めた。

「いや、無理だし、叔母さんの頼みだし」

「私の頼みより大事なわけ?!叔母さんが!」

「うん」

「!!!」

俺が素直に頷くと、夏姉は驚いた表情をしていた。

「どうしてよ!」

「だって、昔からお世話になってるし、母さんの姉だし」

「そんなの……なら、私がはーくんをお世話する!そうすれば、あなたは叔母さんよりも私を優先するでしょ?」

「いや、嫌だし、夏姉に世話されるとか絶対嫌だし、てか、世話されても優先しないし」

「何でよ!!」

「夏姉、いい加減、俺を縛ろうとするのやめてくれない?」

「……嫌だ」

「はぁ…」

俺は助けを求めて、雅さんを見た。雅さんもお手上げみたいに肩をすくめていた。

(夏姉のブラコン進行してね?会わないからか独占欲が酷い)

俺は結構うんざりしていた。昔から俺のそばにいて、俺が行くとこについてきて、べったりそばにいる感じだ。俺を弟として可愛がってくれるのはいいんだけれど、その行為が今の今まで続いていた。高校の時では、不審者だと間違えられることがちょいちょいあって、何度も俺たち、家族に迷惑をかけていた。何度注意してもやめないため、両親は諦めたらしい。

「夏姉、もうやめてくれ、俺のプライベートにまで入ってこようとするし、部屋に勝手に入ってるだろ!」

「はーくんは私のだから、はーくんの物は私が確認するって決まってんの!」

「決まってねーよ?!」

いつもこんな感じで言い合いをしている。


「ねぇ!はーくん!辞めてよ!サポーターなんて」

「辞めません、俺がやりたいことだから、無理」


「何でそこまでやるって言うの?!どうせアイドルなんて大したことのない連中でしょ?売れてない、人気もない、そんなアイドル達に必死になる必要ないじゃん!どうせ落ちぶれていくのに…」


「姉さん」


「!!!」

ビクッとした夏姉。

俺は静かに姉さんを睨みつけた。

「言っていいこととダメなこと…あるの分かるだろ。アイドル『なんて』だと?『大したことない』だと?」

「は、はーくん?ど、どうしたの?」

「知ったような口を聞くなよ!何を知ってるんだ?あんたに……あいつら5人の頑張りを知らないあんたが、言うなよ!」

俺は夏姉に久々に怒った。

「だ、だって……」

「何も知らないくせに決めつけんな!」

「は、はーくん!そんなに怒らないで?ね?」

ぎゅっと抱きついてきたから、俺は夏姉を離れさせた。

「ど、どうして……」

「もう、昔の俺じゃねーんだよ、いい加減弟離れしろ」

「そんな……」


「正直言って、気持ち悪いから」


「!!!」

俺の言葉にショックを受けたのか、自分の口に手を当てて、恐ろしい者でも見るような目をしていた。

「どうして……そんなこと……いうの?」

「あと、くだらないことで呼び出すな……じゃ、帰る」

俺は部屋を出ていった。


「はぁ……気分最悪」

俺は夏姉に触られたところを風呂で洗い流そうと決めて、家に帰った。


◾️夏 視点

「………」

私とマネージャーである雅だけがいる部屋がシーンと静まり返っていた。

「夏、あれはあんたが悪いと思うわよ」

雅が口を開いた。私が悪いのだと……そう言ってきた。

「……私、悪くないもん」

「いや、あれは、あんたが…」


「悪くない!!」


私は鋭い目つきで雅を睨んだ。この人も、はーくんの見方をするのか、と。お母さんもはーくんの見方をした。私が悪いって……そう言ってきた。

「……夏、雨宮くんはもう高校生だよ?小さな子供じゃない。プライベートでも、彼の仕事でも、あなたが関わる、いや、知ろうとすることは間違ってるわ」

「………雅に何が分かるの?はーくんのこと分かってるのは私だけなんだよ?知ったように言わないでよ」

「…そっくりそのままあなたに返すわその言葉……あなたこそ彼のこと分かってないじゃない、自分の気持ちばかりで」

「!!!そんなことない!」

バンって机を叩きながらそう言った。

「……いいえ、あなたは分かってないわ、分かってるなら、彼をあそこまで怒らせたりしない。」

「あ、あれは、はーくんが機嫌悪かったんだよ、今日、調子が悪くて…それで、ああ言ってるだけで…」

「夏はもう、分かってるんでしょ?自分のしてること、あとはそれを抑えるだけなのよ」

「し、知らない!!」

私は違うとすぐに否定すると、部屋を出ていった。


「私は間違ってない!……はーくんが私を嫌うはずないもん!」

ズンズンと歩きながら、私は自分に言い聞かせた。間違えてないと。

ふと私は頭の中であることを思いついた。

「そうだ!あのアイドル達が悪いんだ。はーくんを無理させて、疲れさせてるんだ。だから、あの子達を芸能界から消せば、はーくんが楽になれるよね?それに、もうあの子達のサポーターをしなくて済むようになるし、はーくんはまた、私だけを見てくれる……最高じゃん!そうと決まったら……」


「潰さないとね?あの子達を……」


ニヤリと笑みを浮かべた。








「待っててね?はーーくん🖤」




※あとがき

ハーーックション!!あーーー、しんど。

何だろ、急に寒気が……


夏姉ってちょっと…いや、度がすぎるほどのブラコンなんだよなー……なんか、嫌な予感しかしない。なるべく、あいつらと会わせないようにしないとな……


次回、じいちゃんの手伝い

お楽しみに!

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