『イワナベミズコ』の怪談を聞かせてください。6
あれから、数日が経過した。
ネット上では、今もYouTuberカルタにより『イワナベミズコ』の情報が発信され、定期的に話題が提供され続けている。
今や、『イワナベミズコ』といえばカルタ。
彼が有識者代表のような空気だ。
その証拠に、私のSNSに届く『イワナベミズコ』に関連する情報も、減少傾向にある。
何なら、見当違いな誹謗中傷メールも増えてきているくらいだ。
『イワナベミズコ』に関して調査を開始したのは、カルタよりも私の方が先なんて事は、怪談を募集しているポストの投稿時期等を見れば簡単に推測できるのに。
まともに情報も精査できないのだろうか、今時の若い子は――。
――近くの生け垣から、ガサリと音が聞こえた。
私はビクッと肩を揺らす。
吹き出した汗で冷たくなった体を縮こませていると、目の前を野良猫が一匹、ノスノスと通過していった。
……どうでもいい迷惑メールに怒りの感情をぶつけているのは、恐怖を紛らわせる為だ。
今の私からは、全く余裕というものが無くなっていた。
外出が怖くなった。
部屋の外に出る事が、怖くて怖くて仕方がない。
あれから藤嶌古書店にも行っていないし、ユーレイ君とも会っていない。
ここ数日、完全に対人恐怖症のヒキコモリのような日々を送っている。
それでも人間として生活する以上、お腹は減るし、必用な雑貨も手配しないといけない。
宅配を頼むのが一番手っ取り早いのだが……このままでは人として手遅れになってしまうのではないか。
不安も覚え、一念発起しコンビニに食料等を確保に向かったのだが……完全に挙動不審となってしまっている。
「……ふぅ」
家の近くの、道路沿いの歩道。
時刻は夜。
自分以外に人の気配のしない夜の道を歩いていると、デジャビュを覚え、心臓が否応なく暴れる。
あの夜を思い出すのだ。
河瀬さんから電話が来た、あの夜を――。
「イワナベミズコ」
………。
………。
……。
「………え?」
空耳、かと思った。
もしくは、あの夜の嫌な記憶が脳裏に蘇ったのかと思った。
でも違った。
その声は、ハッキリと。
外部から、私の鼓膜を揺らした音だった。
「イワナベミズコ」
心臓が止まる。
呼吸が止まる。
それくらいの衝撃が、体を襲った。
私の目の前に。
数メートル先に。
――全身が真っ赤な、笑顔を浮かべた。
――人の形をした何かが、立っていた。
「イワナベミズコ」
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