月
@satoka2
月
今日、月は笑っていない。
初秋の夜空。
見上げると、薄黒い雲の間に控えめな光を放つ月が、こちらを静かにのぞいている。
その光は、いったい何を照らそうとしているのだろう。
静かに息を吸い、目を閉じると──情景が、しとっと胸の内に降ってくる。
愛する人との時間を、さらに特別なものに彩るスポットライトのような光。
あるいは、下を向き、思わず深く息をしてしまいたくなるような出来事を
「大丈夫だよ」と慰め、優しく包み込む暖炉のようなぬくもり。
はたまた──
孤独をさらに深く染める、今にも消えそうな蝋燭の火。
明日の不安を、漆黒と静寂で、決定事項のように告げる黒いかたまり。
そして、その影はまるで案内人のように、闇のまた闇──深淵へと誘う。
私はまた、
伺うように夜空を見上げた。
月 @satoka2
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