奥様とステラ 仮装パーティーの夜 三人のお嬢様のデイジーとロビンとリリィ
雨世界
私が幽霊になってもお友達でいてくれますか?
奥様とステラ 仮装パーティーの夜 三人のお嬢様のデイジーとロビンとリリィ
私が幽霊になってもお友達でいてくれますか?
「私ね。幽霊になるの。幽霊になって、ロビンとリリィにいろいろといたずらをしてやる」
そう言って、手をぶらんと胸の前でさげて、幽霊のまねをしてデイジーは言った。
実際にデイジーは大きな白い布の服を着てきて、顔は出していたけど、コミカルな幽霊の顔の描かれているフードをかぶって幽霊の仮装をしていた。(いたずらっ子の幽霊のポルターガイストだろうか?)
ロビンはそんなデイジーのことをあきれた顔をして見ている。
ロビンはミイラの仮装をしているのか包帯をゆるく顔や体に巻き付けている。
そんな二人と一緒にいて、にこにことして楽しそうに笑っているリリィは吸血鬼の仮装をしているみたいで、黒いドレスと黒いマントを着ていて、口元には小さな牙があった。
三人ともお揃いの小さなかぼちゃのカバンを持っている。(お菓子のたくさん入っているカバンだった)
「あ、いたいた。お嬢様たち。さあ、仮装ができたら一緒にパーティーに参りましょう!」
そう言って、あたまに猫の耳をつけている、いつもとは違うぼろぼろの装飾のされているメイド服を着ている猫娘の仮装をしているロボットメイドの少女、ステラがにっこりと笑って、仮装衣装にお着替えをしている三人の仮装パーティーにやってきたお嬢様たちにそう言った。
「わかりました! ステラ!」
と元気よくお嬢様たちは真っ黒な布で覆われた衣装部屋の中にやってきたステラに言った。
秋の満月の夜。
仮装パーティーの夜。
星の綺麗な明るい夜。
奥様のお屋敷のとっても広いお庭には仮装パーティーのあの世をイメージした装飾がいたらところにされていて、たくさんのお料理とたくさんの仮装をした不思議な服を着た人たちでとても華やかににぎわっていた。
「あ、花火もあるみたいだよ」
「すごいね」
「花火みたいです! みんなで一緒に見ましょう!」
仮装パーティーの招待状を見ながらお嬢様たちはそんなお話をしている。
お嬢様たちはみんなお料理を食べていて、デイジーは、鴨肉だろうか? とっても柔らかそうなお肉の串料理を食べていた。
ロビンはイカ焼きの串料理を食べていて、リリィはお皿にのせたあつあつのお好み焼きを食べていた。
お嬢様たちはとっても楽しそうにわくわくしていて、ステラも小さな子供みたいにとってもわくわくしていた。(もしかしたらお嬢様たちよりもステラのほうがわくわくしていたかもしれない。生まれて初めての仮装パーティーだったから)
「ステラ。あのお料理とって。貝のやつ」
「ステラ。あの人の仮装はなんの仮装なの?」
「ステラさん。ごめんなさい。お洋服にソースをこぼしてしまいました」
お嬢様たちのいろんな言葉にステラは「はい。お嬢様! かしこりました」とか、「大丈夫ですか! お嬢様!」とか言ってあわてながら忙しくお相手をする。
「どこかに素敵な王子様はいないかな?」
「そんな男の子いませんよ。きっと世界のどこにもね」
「そうですか? 私はいると思います」
顔を寄せ合ってそんなお話を三人の小さなお嬢様たちはくすくすと笑いながらしている。
「あ、奥様! こんばんは。良い夜ですね」
と奥様を見つけてステラはにっこりと笑って仮装パーティーの挨拶をした。
「こんばんは。ステラ。ええ。本当に良い夜ですね」
とにっこりと笑って奥様は言った。
奥様は魔女の仮装をしていた。良い魔女か悪い魔女かと言われると、おばけの仮装が基本だったので、どちらかと言うと悪い魔女に見えた。(思わずとっても似合っていると思ってしまった。ステラがそう思ったことを奥様はなんとなくわかっているみたいで怖い顔で笑っていた。あとでお仕置きをされてしまうかもしれない)
三人の小さなお嬢様たちも仮装パーティーの主催者である奥様に「こんばんは! 良い夜ですね」と元気いっぱいに挨拶をした。(奥様も笑顔でお嬢様たちに挨拶をした)
それから奥様とわかれて(仮装パーティーの主催者である奥様はお客様たちとのお話でとっても忙しそうだった)仮装パーティーを楽しんだ。
金塊を探している海賊の仮装をしている人がいる。(金塊の入った宝箱を見つけたあとで、本当に宝箱の中に入っている作りものの金の延べ棒を歩いている人にあげたりしていた)
ゾンビの仮装をしている人がいる。(とっても楽しそうに樽の中に入っているお酒を大きなグラスですくって飲んでいた)
かぼちゃのおぼけの被り物をしている人がいる。(とっても楽しそうに踊ったり戯けていた)
なんだか本当に不思議な世界の中に迷い込んでしまったみたいな感じがしてとっても楽しかった。(そんなことを目をきらきらとさせてステラは思った)
仮装パーティーをそんな風にみんなで一緒に歩きながら楽しんで、大きな音を立てて、いろんな色の大きな花火が星空に輝くようにして咲き始めたときに、くいくいっと誰かが感動しながら星空に咲く綺麗な花火をぼんやりと見ていたステラのスカートを小さく引っ張った。
見るとそれはデイジーだった。
「ねえ。ステラ。ステラは死んでしまったあとは、人はどうなると思う?」
デイジーがいつものあどけない明るい顔とは違って、なんどかとってもまじめな顔をしてステラに言った。
「はい。デイジーお嬢様。えっと、……」
と言ったところでステラは困ってしまった。ロボットのステラにはとっても難しい質問(ロボットじゃなくても、きっととっても難しい質問だとは思うけど)だったからだ。
えっと、死んでしまったあとの世界って本当にあるのかな? ってそんなことを頑張ってステラ考えてみる。
……、それから、きっとないのだと思う。
死んでしまったら、なにもなくなってしまうのだとステラは思った。(とっても悲しいけど、そうだと思った。それは私が命のある人間ではなくて、作られたロボットだからなのだろうか?)
ステラはデイジーになんて言ったらいいのかわからなくて、うんうんと難しい顔をした、すごく悩んでしまった。
するとデイジーはそんなステラを見てくすくすと笑って、「なんてね。変なことを聞いて、ごめんなさい。ステラ。死んでしまったあとの世界なんてどこにもないよね。だって本当の幽霊なんてこの世界のどこにもいるわけないんだから」とステラに言った。
ロビンとリリィはいつのまにか遊び疲れてすーすーと寝息をたてて眠ってしまっていた。
デイジーもとっても眠たそうな顔をして大きなあくびをしていた。
ステラがロビンとリリィを抱っこして、デイジーと手をつないでお屋敷まで歩いているときに、「あのね。ステラ」とデイジーが言った。
「はい。なんですか? デイジーお嬢様」
歩きながらステラは言う。
「私たちとお友達になってくれて、ありがとう。いつもいっぱい遊んでくれてありがとう。ステラ大好き」
と恥ずかしそうにしながらデイジーは言った。
突然のデイジーの言葉にステラは思わずきょとんした顔をする。
「よかった。とっても恥ずかしかったけど、ちゃんとステラに言葉にして、今夜のうちに、私の気持ちを伝えることができてよかった」
とそんなステラを見て、嬉しそうな顔でにっこりと笑って、デイジーは言った。
「ありがとうございます。デイジーお嬢様。私もデイジーお嬢様のことが大好きです! ロビンお嬢様もリリィお嬢様も大好きです! お嬢様たちとお友達になれて本当に幸せです!」
と満面の笑顔で笑って、猫娘の仮装の耳と尻尾を動かしながら、ステラは言った。
デイジーが我慢しきれなくて、ロビンやリリィと同じようにすーすーと寝息をたてて気持ちよさそうに眠ってしまったのはそれからすぐのことだった。(もちろん三人ともステラが抱っこして、明るい夜の中を歩いて、お屋敷まで連れて行った)
三人のお嬢様を抱っこしながらステラはとっても幸せだった。
奥様とステラ 仮装パーティーの夜 三人のお嬢様のデイジーとロビンとリリィ 終わり
奥様とステラ 仮装パーティーの夜 三人のお嬢様のデイジーとロビンとリリィ 雨世界 @amesekai
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