「コイキング」の向かいに
三月
第1話
落ちて来るものを見た。
視線が向けられるとおのずから分かるように、自分のもとへとやって来るものにはあらゆる警戒が向けられそれが体内で収まり切らないので筋肉が動き、関節が伸び縮んで、骨がきしみ、それを覆う皮膚の先に生え揃った毛先が全身に
見ていたのは三人だけだった。
三人は腕を伸ばせば触れられる距離まで寄って来るとお互いの顔、お互いの目とお互いの鼻、お互いの口などを見てそれぞれが特徴的に整っているか歪んでいることを確認した。奇妙なことだ。地面に転がる落下物を見るつもりが、なぜ互いの顔をお見合いすることになる? 最初に気が付いたのは加篥で、二人も数秒ののち気付いて驚いたがすでに目一杯に
ひとりがそろそろ構わないかと
それからゆっくりと誰かが手を伸ばした。それは触れようとするものとの間の距離を測るための道具である。必ず辿り着くからこそ距離を測るのであり、決して触れられないものにとっては遠近の概念すら過ぎた道具である。
ハイ、あなたが鬼よと誰かがいった。
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