スライム・ザ・グレート
はち
第1話
スライムの加護、と確かに書いてあった。
異世界に生まれ、3年目に教会で行われる祝福の儀にて神より授かる儀式にて大司教が公開したステータスにはスライムの加護とあったのだ。それから早7年経ち、僕は使えない子扱いされている。
この、加護って言うのがまたよく分からないが、この世界の生きとし生ける人やそれに近い存在はこの世界の神から何らかの加護を貰うそうだ。そして、その加護が人の生き方を左右する。例えば、魔術の加護を貰うと魔術の扱いが長けており、将来は大賢者や大魔導士とかそう言うのに成れる。鍛冶ならば神代の武具を打てたりするとかなんとか。
つまり、その加護を受けるとそのモノの扱いが非常に上手くなると言う事だ。
「で、スライム」
スライムの加護、名前だけで内容を詳しく教えて貰えないのが僕の地位を辱める事に拍車を掛けている。普通に辺境伯の三男坊なので他の、正確に言えば兄二人と姉一人に比べて扱いが本当に悪い。
まぁ、扱いが悪いは別に良いんだ。貴族としては長兄が、騎士としては次兄が継ぐので僕が入り込む余地がない。姉は姉で選帝侯の息子のどれかに嫁ぐ。
行き先不安が僕だけなのである。まぁ、まだ10歳なので焦るよりも勉強したり体力を作ったりするしかない。
この世界、前世と違い魔術がある。あと、日本人の考えたさいきょー中世みたいな感じである。多分、僕以外の異世界転生者がいたのだろう。水洗トイレや上下水道が確りと整備してあり、また、銃器の開発もマスケット銃辺りまで出来ている。
16世紀の社会構造と、18世紀の科学技術を持っているのだ。何ともいびつな世界だ。最も、それを許容としているのが魔物と言う存在だろう。これは、まぁ、魔物だ。ゴブリンとかオークとかそう言ったファンタジーな生き物たちだ。知能が高いのも居れば居ないのもいる。色々とあるのだ。
そして、そんなファンタジーな生き物の中でも更に下級がスライムと言う生き物だ。スライム、無生殖生物であり魔力の結晶、つまりは魔石を核に動く生物である。魔力が濃く、一定の湿度がある場所に自然発生する。小さいうちは子供でも殺せるが、ある程度の大きさ、具体的に言うと直径が30cm近くなると人を殺すには十分な大きさとなる。
スライム自身の活動能力は非常に低くナメクジとかカタツムリよりは速いが、活発的に動きまわる相手には確実に追いつかない。
「まぁ、戦力分析で言えば。君等の動きは理にかなっているんだ」
攻撃と防御で言えばスライムは防御を選択する。専守防衛ともいえる。外部からの刺激に対して反応し攻撃する。普段のスライムは水たまりの様に薄く潰れて待機しており、獲物がスライムを踏むと、踏まれた方角に対して自身の体を円錐状の針の様に凄まじい勢いで突き出して刺し殺すのだ。
つまり、なんちゃってトラップが、スライムの戦法になる。これが、所謂ノーマルと呼ばれる世間一般で見られるスライムの攻撃方法である。
そして、スライムには多彩な種類がある。例えば酸性の躯体を持つアシッドスライム、毒性の躯体を持つポイズンスライム、マグマから生まれたラヴァスライムなどなどぶっちゃけ体の性質によって〇〇+スライムと名前が付けられている。
なので、鉱物が多い場所で生まれたスライムは体に鉱物を取り込んで驚くほど硬いスライムも居り、名前もメタルスライムだ。某ゲームと違って逃げ足は無いので狩るのは普通にできるが、まぁ、狩った所で経験値が大量に入ったりすることも無い。
「さて、問題はだね」
そして、僕は目の前に生まれた新生物を、名付けるとしたらマーキュリースライムをどうするべきか、と悩んでいた。
マーキュリー、水星ではない。水銀だ。水銀スライム。次兄が僕を揶揄って狩ってきたと言うキングスライムの核を渡してきたのだ。スライムとは、水にスライムの核を落とせば生まれる。核の大きさに依って操れる水量が決まり、その為目の前の核では数メートルに及ぶだろうが水銀の量的に10cmにも及ばない水溜まりが出来ている。だが、これは間違う事なきスライムである。どうして、そんな事が分かるのか?と言えば僕の加護のお陰である。
スライムは非常に単純な生物である。意思疎通は一切出来ない。単細胞生物のアメーバに近いだろう。スライムの生存本能であろうより多くの魔力を集め、より多くの水分を求める、それを忠実に行う。そしてその思いが何と無くだが伝わる。もっと具体的に言えば魔力欲しいって感覚である。犬の加護を貰えた物は犬を使役できる。なので僕も単純論で言えばスライムを使役できる。ただし、スライムには知能が無い(単細胞生物だし、アメーバだから)ので言う事は聞かない、と思われている。現に、隷属魔術はスライムに効かない。
「ただ、普通に攻撃しなくなるだけで結構凄い加護なんじゃないかとは思う」
腕を組み、マーキュリースライムを見る。核に魔力を注ぎ込んでみる。親たちのお陰で魔力の量はかなりある。魔術の腕は隠れて練習してみたりもしたが容量があがるだけで一向にサンダガとかメラゾーマは撃てない。
魔力を増やす方法は簡単である。取り敢えず、魔力を使いまくれば良い。筋肉と一緒だ。年齢を経る毎にその増加量が低くなる。これは理由は不明だが、20を超える頃には魔力量はほぼ増えないと言う。多分、そこらへんで魔力経路とか言われている神経というかリンパというかそう言う体の中にあるらしい何かの成長が止まるからだ、と言われている。細部は知らん。
ともかく、小さい頃からスライムに襲われないと知ったので魔力を流し込みまくって糞デカスライムを作ろうと思ったり、サンダガとかメラゾーマとか撃ちたいと思って魔術を撃ちまくる練習したりした結果こうなったのだ。
「うーむ」
水銀スライム、小ビンに移して核を大きくしていこう。因みに、水銀から核を出して水に放り込めばノーマルスライムになる。瓶には水を入れてあるのでピンセットで核を摘まんで移し変えればあら不思議、ノーマルスライムの出来上がり。
そして、それを瓶の口を確りと締めてから胸ポケットに入れる。取り敢えず、今後の方針は大きく変わらない。魔力量を増やしていく、剣術を中心に体力と筋力をつけていく。あとは学力を伸ばす、だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます