第45話 警察


 俺は警察に逮捕された。今は身柄を拘束され、留置場に入れられている。

 毎日ツネが暇だから面会に来てくれるので、退屈はしなくて済んだ。


 あの後、アリスクラウンはほとんどが逮捕され、死傷者は500人を超えたが、警察が取り締まりを強化したので少ないほうだったらしい。

 覚醒者至上主義のアリスクラウンはトップの竜崎命をはじめ、主要な人物は内乱罪で無期懲役か死刑。

 他のメンバーも三年以上の禁錮とかなり重い罪になる。


 『tortie』から強盗したミスリルソードなどは返品されたが売れない為、工房でミスリルに戻してまた使うらしい。

 そして店を直すのには店舗保険を使いなんとかなったそうだ。


 『tortie』には最悪な出来事だったな。


 渋谷ジャックは他のところでも同時に起きていて、俺が行ったセンター街はたまたまいたのでトップを捕まえられたが、竜崎が他の場所に行ってたらもっと犠牲になる人が増えていたと言う事だった。



「出ろ」

「ん?飯食ってんだが?」

「いいから出るんだ」

 と収納に入ってた牛丼を食べていたが、また収納に戻して檻から出る。


「はぁ、何度聞かれても同じですけど?」

「いや、もういい。今まで悪かったな」

「は?えーと、やっと?」

「無罪放免だ。が、厳重注意だ」

「……まぁ、銃刀法違反ですしね」

 そう、俺は覚醒者として、街中で剣を振り回したと言う事で捕まっていた。

「そうだな、……だが俺はよくやったと思うがな」

 と最後に嬉しいことを言ってくれる警察官と一緒に歩く、喋りながら手続きをしてようやく外に出られる。


「ふぅ、やっとか」

 と2週間ほどかかったかな。

「ルカ!」

「よぉ、やっと出られた」

 とツネ、マー坊、カグヤがいた。


「お父様にお願いしたので、何とかなりましたが、今後この様な事はない様に!」

 とカグヤが膨れっ面で俺を怒る。

「本当だ、流石に派手にやり過ぎだ」

 マー坊が呆れ、

「まぁ、無事でよかった」

 とツネが言う。



「とりあえずお前の車は取ってきてあるから移動しながら話そうか」

「お!俺の車、ありがとう」

「探すのに苦労したぞ?」

「ハハッ、あん時は急いでだから俺も覚えてなくてさ」

 と俺が警察に捕まる前にツネが来たので、鍵を渡して車を取ってくるように頼んだのだ。


 車に乗り込むと助手席にカグヤ、後部座席にツネとマー坊が乗る。

「んじゃ、どっか喫茶店でも?」

「だな、新宿に戻りながら探そうぜ」

 というのでとりあえず新宿に向かう。


「そうか、死刑が決まったのか」

 竜崎命は死刑が確定したらしい。

「だな、それだけ大きな事件だったからな」

「はぁ、探索者は関わらない方が良かったのですが、ルカの気持ちもわかるので何とも言えませんけどね」

 関わる気は微塵もなかったが、ツネがやられてしまったしな。

 だが、勢いに任せて行ったのは反省だな。


 とりあえず新宿に着いたのでパーキングに車を停めて、歩いて喫茶店に入る。


「本当は凄いマスコミが来るはずだったのですが、お父様が捩じ伏せましたの」

「あはは、カグヤの父さんには頭が上がらないな」

 と久しぶりのコーヒーを飲みながら、電子タバコを吸う。

「はぁ、出れてよかった」

「本当にな。まぁ、元気そうでなによりだな」

 とツネがコーヒーを飲みながら言う。

 隣ではパスタを頬張るマー坊が頷く。


「覚醒者至上主義か……まぁ、他にもいるのかもな」

「いるだろうな。だが、行動に移したのは初めてのケースだろ」

「世界的にもニュースになりましたからね」

 とスマホを見せてくるカグヤ。

 スマホにはニュースになっている画像が映し出されている。


「はぁ、これからの事を考えたくないな」

「だろうな、多分家の前にはマスコミがいると思うぞ?」

「有名人だな」

 と嫌な事を言うマー坊。


 まぁ、ツネがやられたのを聞いて怒ったが怒りのやりどころがなくなってしまったのでしょうがないがな。


「はぁ、だが、1人逃してしまったけどな」

「あぁ、ルカの言ってた副隊長ってやつか」

「あいつは竜崎を動かしていたからな。あいつの計画に乗ったのが、竜崎の間違いだ」

 実質、計画から実行まで全部、チナが行って来たんだろうな。


「そっか、竜崎もなんか可哀想だな」

「まぁ、口車に乗せられてここまでやったんだ、死人も出てるし同情の余地はないかな」

「まぁ、そうだな」

 あいつは必死だった。

 自分の弱さを消し去ろうとしてたからな。

 だが、やり方が間違っている。

 早くあいつに会ってれば……なんて考えるのはやはり偽善だな。


 その後はみんなを送ってからマンションの駐車場に入ると入り口にマスコミが多いな。

 車から出てマンションの入り口に向かうと、

「あの、一言もらえますか?」

「なんだ?」

「この事件をどう思われますか?」


「……悲しいな」


「あ、ありがとうございます」

 俺はいま人を近づけたくないオーラを出しているのかもな。

 その他に何か言われることもなくマンションに入る。


 ようやく自宅に帰れた。

 ビールを取り出し窓を開けると涼しい風が中に入ってくる。


 覚醒者至上主義か……


 みんなが覚醒出来るのが1番なんだがな。



 

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