第41話 劇薬


 星3ダンジョン42階層をモンスターを倒しながらレベル上げをしているが、もう少しでレベルは限界の100になる。

「ふぅ、ようやくだな」

 モンスターを倒して一息つく。

 時計を確認するともう16時だ。

 早く100まで上げて帰らないとな。


 42階層のモンスターはミノタウロスファイター、ドロップにアックス、ナックルダスター、盾、ショルダーアーマーをたまにドロップする。この辺になると鋼鉄製なのであまり合成は出来ないからその内ミスリルの上、オリハルコンなどにして行くつもりだ。


 43階層に下りる階段を見つけたので一応ステータスを見てみると、

ーーー

 里見瑠夏サトミルカ  33歳

 レベル100 ジョブ 合成師 

 スキル 合成LvMAX 鑑定 加工 調合 チェック 選択 作成 紫電一閃 模倣 new

 ユニーク 追加効果 

ーーーーーー

 武器……ステータス(力、素速さ、防御、知力、幸運)+3、+5、+10、+15属性(火、水、風、土、雷、氷、聖、光、闇)

 防具……ステータス(力、素速さ、防御、知力、幸運)+3、+5、+10、+15、+20、耐性(火、水、風、土、雷、氷、聖、光、闇、)、俊足、瞬歩、硬化、腕力、剛力、フィット、防汚、軽量化、

 道具……収納(小、中、大、特大)、回復量UP(小、中、大)、属性(火、水、風、土、雷、氷、聖、光、闇)、結界(小、中、大)、帰還、爆破、麻痺、索敵、鑑定、

ーーー

「お、100になったな。よし帰るか」

 『帰還玉』を使って出口付近に帰る。


 更衣室に入り着替えようとすると、

「あ?お前俺に逆らうのか?」

 ロッカーで隠れているが声が聞こえてくる。


「ち、違うけど、人間は平等だと思うし」

「ちげぇんだよ!覚醒者だけで十分だ。あいつらは何も出来ないから俺らの下で奴隷でもやってりゃいいんだよ」

 と物騒なことを言ってるな。

 またアイツらの仲間みたいだな。


「おい、その辺にしとけよ?他の探索者の邪魔だ」

 とそちらの方に歩いていく。

「あ?お前も探索者なら分かるだろ?俺たちは選ばれたんだよ」

「はぁ、わからんな。覚醒者が非覚醒者を下に見る道理がないからな」

「お前もかよ!」

「そんなもん、非覚醒者が仕事してるから俺たちは飯食うのに困らないだろ?服や娯楽もそうだ。はなから比べるのが間違いだ」

 と言うと男は赤くなり何かを呟いている。


「わからないのか?お前たちは間違ってる」

「うるせぇよ!そんなもん奴隷にした後俺らに奉仕する様にすればいいだろ!」

 と男は壁を殴る。


「はぁ、人の上に立つ人間はそんな事考えないぞ?」

「て、テメェはぶっ殺す」

 と剣を抜き、こちらに突っ込んでくるので、避けて腹に拳を当てる。

「ゴェッ!」

「ほんとステータスすら上げないでよくそんな事、口にできたな?」

 と顔をぶん殴ると壁に激突する男。


「グッ、く……そ、クソクソクソクソタレっー!」

 と何かを取り出そうとするので俺は瞬歩でその手を握ると他の中にあるものを取る。

「あ!お、俺のだ!返せ!」

「へぇ、これが壊れた玩具アリスクラウンの正体か」

 紫色の錠剤で鑑定してみると、


 『クレイジードロップ改』……狂戦士化し、トリップ状態にする劇薬。タガを外し体の動きを一時的に狂人化させ、強力な力を生み出すが、副作用で廃人になる可能性がある。


「お前よかったな。これ飲んでたら下手すりゃ廃人だぞ?」

「は?何言ってんだ?これは俺ら覚醒者に与えられた奇跡の薬だ。何倍もの力が出るんだから返せよ!」

 と俺から奪おうとするが、胸を蹴り壁に打ち付けると倒れる男。


「はぁ、『鑑定』で確認した。クレイジードロップってのを改良したみたいだが、改悪だな。出来損ないの薬だ」

「は?わ、訳わかんネェこと言ってねぇで、返せよ!」

 立ちあがろうとする男の背中を踏みつける。

「レベルの差もわかんないのか?とりあえず警察呼ぶか」

「く、くそ!」

 となんとか俺の足を退かして逃げ出して行く。


 まぁ、また警察は俺も勘弁だから逃したんだけどな。


「おい、大丈夫か?」

「は、はい、ありがとうございます」

「さっきのは知り合いか?」

「そうです。『アリスクラウン』ってところに入れとうるさくて」

 そのまま薬の名前か、覚醒者至上主義ってところかな。


「とりあえずアイツが知り合いだったら辞めさせるべきだな」

「……俺の言うことは聞かないんで、話し合いにすらならないです」

「なんか聞いてるか?」

「……今週の日曜に渋谷に集まるから来いって」

 3日後か、さて、何をするつもりだ?


「分かった、時間は?」

「それは言ってなかったです。あ、アイツ大丈夫ですよね?」

「それはわからない……」

「……ですよね、俺もなんとかします!」

「だな、任せるよ」

「はい」

 と言って男は走って行ってしまった。


「さて、情報は仕入れたけどどうするかだな」

 とりあえずここのギルマスにでも言っとくか。

 

 着替えて更衣室を出るとギルマスの堂本が出てきていた。

「里見さんでしたか、更衣室で暴れてると連絡があって」

「あぁ、ちょうどよかった。これ」

 と薬を渡す。

「こ、これは?」

「クレイジードロップっていう劇薬を改悪した代物だな。覚醒者至上主義のやつが持ってたよ」

「は?それは最近の覚醒者の事件に関わるものですか?」

 と慌ててハンカチに薬を包む。

 

「だな。日曜に渋谷で何かあるらしい。多分大事になるぞ?」

「はぁ、それはやばいですね。この事は警察に連絡します」

「よろしく頼む」

 と言って堂本と別れ外に出る。


 空を見ると天気はあまり良くないな。

「警察でなんとかなればいいんだが」

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る