第5話 同級生


 ポケットの中でスマホのバイブが鳴るので、席を立って外に出ると、ツネから電話が来ていた。

 折り返しかけると、

『よぉ!今何してんだ?』

「ん?パチンコ」

『は?金持ちなのにか?』

「ハハッ、暇つぶしだな。かかんなくてイライラしてたとこだよ」

 久しぶりにパチンコに来たがあまり面白くない。

『お前もっと別のギャンブルがあるだろ?』

「カジノとか?行った事ないのにやれるかよ」

『庶民だな』

 そう、庶民はギャンブルと言ったらパチンコか競馬あたりだよ。

「で?何の用だ?」

『お、そうだった、ルカはまた持って来るのか?』

「そうだなぁ、気が向いたら?」

『んなこと言ってないで、パチンコするくらいなら稼げよ』

「まぁ、そうだなぁ」

『俺にもダチだからってことで紹介ボーナスが入るんだからさ』

「お前のためじゃねーかよ!」

『まぁな』

 と笑ってるツネとは高校からの長い付き合いだ。

 まぁ、半年も連絡とってなかった間に副店長まで上がってるとは驚いたがな。


『まぁ、久しぶりに飲みに行こうか!』

「いいけど、マー坊も呼ぶか」

『だな、あいつ今何してんだ?』

「さぁ?電話してみるわ」

『了解!んじゃ後で場所はメールするわ』

「あいよ」

 電話を切ると、マー坊、今井真斗イマイマサトと言う同級生に電話をしてみるが電話に出ないので、折り返し電話があるまで、またパチンコを打ちに店に入っていく。


 結局、一回かかってのまれたのでパチンコはやめてコンビニに寄って帰る。

 まぁ、メールを見るとやっぱり新宿の居酒屋らしく、着替えて出かける。

 どうせならこっちにしてくれれば良いのに、と思いながら電車を乗り継ぎ新宿へ到着すると、スマホが鳴る。


「久しぶりだな」

『おぅ、久しぶり』

「今、何してんだ?」

『探索者だよ、俺は覚醒したんだ。剣士だけどな』

 と折り返し電話してきたマー坊は、探索者になっていたようだ。

「奇遇だな、俺も今探索者だよ」

『まじか!』

「今日、新宿の『麦わら猫』ってとこでツネと飲むんだけど来れるか?」

『行く行く!何時からだ?』

「18時に予約してあるらしいぞ」

『分かった!遅れるかもしれないけど行くわ』

「あいよ、待ってるわ」

 と言って電話を切ると、店の地図をメールで送っておく。

 今は午後16時を少し回ったとこだ。

 また暇つぶしにパチンコ屋に入るのも時間の無駄なので、ブラブラと新宿の街を歩いてまわる。


「ん?こんなとこにダンジョン専門の道具屋があったんだな」

 そこは西口から少し離れた場所にポツンとあり、古びた看板には『ダンジョン専門道具屋いぶき』と書いてある。

 店に入ると少し臭うが、薬草などの臭いだろう。我慢できない程では無いな。

「いらっしゃい!婆ちゃんお客さんだよ」

 と元気な声で女の子が呼ぶと奥からお婆さんが出て来る。

「あら、いらっしゃい、初めての顔だね」

「こんにちは、少し見させてもらうね」

「はいはい、いいですよ」

 店の中を見るとポーションや薬草、スキルボールなんてのもあるな。

「お客さん、探索者なんでしょ?ポーションは買っといた方がいいよ?」

「そうだな、それじゃあこのポーションを4つに、ベルトを貰おうかな」

 ポーションは試験管のような物に入っていて、それを腰に付けるためのベルトも一緒に買う。


「毎度あり!ポーションが4つで400万、ベルトが5000円だよ」

「ギルドカード使える?」

「使えるよ!」

 カードを渡して支払いを済ませる。

 割れないように新聞紙で包んで袋に入れて渡して来る。

「ありがとう」

「ありがとうございました」

 店を出ると丁度いい時間だな。

 店に向かって歩いて行く。


 『麦わら猫』と言う居酒屋に着く、猫の看板に店内を覗くと洒落た感じだな。

 中に入るとツネの名前を言う。

「はい、榊原様ですね。こちらです」

 と店員が2階のボックス席に案内してくれる。


「お、やっと来たな!マー坊は?」

 と上着を脱いでハンガーに掛けながら、

「遅れるかもしれないが、来るってさ」

「そうか、じゃあ先に始めますか!生二つと串盛りね」

 とやはり仕事帰りみたいでワイシャツ姿のツネ。

「はい、ありがとうございます」

 と店員がタブレットを押して、確認してからいなくなる。


「マー坊は今何してんだ?」

「俺と一緒、覚醒したらしくて探索者だ」

「くそ、俺だけ覚醒してないのか!いいなぁ」

 と生が二つ来たので乾杯をして軽く飲むと、

「2人が探索者か、そうだ!お前の売った武器、あれどうやって手に入れたんだ?」

「それは秘密だな。探索者は秘密が多いんだ」

「くっそー、あの武器、刻印したら直ぐに海外に行ったぞ?」

「そうなのか、あの店で売るんだと思ってたよ」

 海外に渡ったのか、なら高くなってるんだろうな。

「うちの商品にしたかったが、店長が上に報告したらしいんだよ」

 愚痴になってきたのでビールとつまみを頼む。


 いい感じに酔って来たなと思ってたら、ようやく、

「お客様が到着しました」

「よ!久しぶり」

 と入って来るのはガタイのいい背の高い男。高校時代はラグビーをしていたが、少し絞れたのかスッキリしている。

 上着を脱ぐとロンTがピッチリしていて筋肉を強調しているのが笑える。

「あはははは、なんだよその筋肉」

「いいだろ?男は筋肉!」

「あはは、脳筋は変わってないな」

 マー坊は白い歯を見せながら笑って生を頼むと、串をとって食い出す。

「腹減ったんだよ、てか、ここ遠いから!」

「な!俺も1時間くらいかかって来たんだぞ?」

「いや、俺は会社勤めだから2人が俺に合わせろよ」

 まぁ、探索者は時間が取れるからいいがな。

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