第2話 宇宙海賊視点 遠国の王女の乗る客船に襲いかかりました

 俺様は『辺境の赤ヒゲ』として、近隣では名を馳せている有名な宇宙海賊だ。


 はあああ、知らないだと?

 貴様、潜りか何かか?


 俺様の名前はここ数十光年に鳴り響いているはずだ。


 俺様の一日は、売り上げもとい前日に襲撃や略奪した金額を数えることから始まる。

 奪って来た金貨を数え上げて、見目麗しい女どもは奴隷商人に売りつけて金に換えるのだ。

 そして、その一部を帝国貴族であるエグモント・フッセン帝国男爵に捧げる。

 いわゆる上納金だ。

 海賊が売り上げの一定金額を帝国の貴族の袖の下に入れるだと、そんなのが許されるのか?

 そう思ったお前は考えが古いのだ。


 今や宇宙海賊が貴族に付くのは当たり前で、見逃してもらえる代わりに一定額を納入するのだ。

 裏金で世間の反感を買っても選挙でみそぎを済ませたら無罪放免のとある連邦の代議士らと何も変わらない。今や、海賊のトレンドの一つだ。


「貴族の助けなんて借りない」

 と粋がっていた海賊の多くは帝国の艦船によって沈められてしまった。

 今や生き残っているのは貴族に裏金を渡している賢い海賊だけなのだ。


 そんな帝国貴族のフッセン男爵が俺達に望むのは一つだ。

 出来たら帝国で海賊働きはしないでほしいということだった。

 いくらフッセン男爵と言えども帝国内で海賊行為をされるといつまでも庇えないからと。

 他国で、出来れば帝国と敵対している国で海賊働きをしてくれれば帝国内で喜ばれるので、とても嬉しいとフッセン男爵は俺達に示唆してくれた。


 俺達海賊はそれを忠実に守っていた。

 今俺様が縄張りにしているのはユバス王国とか言う辺境の小国だ。帝国に逆らっては到底生きていけないのに、今でも帝国の属国になっていないという摩訶不思議な国だ。


 その地で俺は精力的に海賊行為をしていた。

 たまに現地軍がのこのこと出て来ても俺様の海賊船の方が圧倒的に強いのだ。

 俺様は当然のことながら返り討ちにしてやった。


 これが帝国軍ならばこうは簡単にいかなかったが、本当に今は楽勝だった。

 これほど仕事のしやすい宙域は初めてだ。

 俺は二日と開けずに海賊行為に手を染めて金を稼いでいた。



 今日も俺様は帝国の港にいる俺様の部下から中継都市サーリアに向かう客船の情報を得た。記念すべき25回目の襲撃だ。クォーター、俺の好きな数字だった。

 この船は愚かなことに俺様の縄張りに護衛艦もつけずにのこのことやってくるというのだ。

 まあ、高々中型の客船だが、その中に遠国バミューダ王国とかいう国のお姫様がいるという話だった。姫は捕まえれば高く売れる。何なら交渉役にフッセン男爵を入れても良いだろう。まあ、上前の半分は持って行かれると思うが……


 俺様は俺様の船を客船に合わせてワープさせたのだ。

 そして、操縦士はドンピシャな位置に俺様の海賊船『赤ひげ』号をワープアウトしてくれた。


 ドシン!

 ショックと共に船首を客船の土手っ腹に突き入れたのだ。


「野郎共、行くぞ!」 

「「「おおおおおお」」」

 アンカーを船に叩き込んで『赤ひげ』を固定すると、船首に潜んでいた俺たちは抜剣して突入した。

 俺たちを待ち受けていたガードマン達は一瞬で肉塊に変えていた。

 俺様達に敵うわけはないのだ。

 抵抗するだけ愚かだ。


 途中、爆発音がして船が大きく揺れたが、どこかの馬鹿な部下がやり過ぎたのかもしれないと俺は気にもしなかった。


「キャーーーー」

 泣き叫ぶ女達から部下達が身ぐるみ剥ぐのを任せて、俺は上の特等室を目指したのだ。


「貴様ら、何やつだ?」

 特等室の前で騎士達に誰何された。

「俺様はこの辺りでは有名な『辺境の赤ひげ』海賊団だ。死にたくなければ降伏しろ」

 優しい俺様は一応降伏勧告してやった。


「海賊共に降伏するわけはなかろう。死ね!」

 騎士達は何をとち狂ったか俺様に斬りかかってきた。

「ふんっ、雑魚が」

 俺様はその剣を躱すと一撃でその騎士を斬り捨てていた。

 残りの二人の騎士は部下が始末してくれた。


「開けろ」

「へい!」

 俺様の部下がロックのかかった部屋を剣で叩き斬って壊してくれた。

 扉があく。


「ひ、姫様!」

 中は侍女達が姫を守って短剣を突き出ししていた。


「女達は傷つけるなよ」

「「「へい」」」

 下卑た笑みを浮かべて部下達が侍女達に襲いかかった。

「「キャーーーー」」

 あっと言う間に侍女達は部下に武装解除されていた。


「おのれ、宇宙海賊共、姫様に近寄ることは許しません」

 年配の侍女が姫を庇って俺の前に短剣を握っていた。

「おいおい、婆さん。怪我するぜ!」

「何を言う。私は死んでも姫様に指一本触れさせん」

 婆さんは俺の折角の助言に耳を傾けてくれなかった。

 仕方がない。

 俺様は手力をその侍女の首にお見舞いしたのだ。

「ギャーーーー」

 変な声を上げて侍女が倒れた。

 年増は声まで胸くそ悪くなる。

 叩き斬っても良かったが、姫様が半狂乱になっても事だからここは手荒なことは止めたのだ。


 残りは震える姫様だけだった。

 姫様は王女なだけにとてもいい服を着ていた。

 身にはたくさんの宝石もつけていた。

 そして、透けるような白い肌。ピンクの髪。整った目鼻立ち。怯える顔。俺の好みに全て合致していた。


「助けて、セラフィ様!」

 王女は婚約者か誰かに助けを求めたみたいだ。

「ふんっ、お姫様。いくら助けを求めてもこんなところには来ねえよ!」

 俺は現実を教えてやった。


 俺様は王女を捕まえようとして前に出たときだ。

「触らないで」

 王女は俺の手を叩いてくれた。この『辺境の赤ひげ』様の手を!

 むっとした俺様から逃れようとして、後ずさって足をよろめかせて盛大に転けてくれた。

 スカートが大きくめくれあがった。


「俺様に逆らうとは、良い根性をしているじゃねえか!」

 俺様は露わになった女の足を見て目をぎらつかせた。

「近寄らないで!」

 怯える女は俺の好みだった。

 俺の理性が飛んだ。

「キャーーーーー」

 俺は悲鳴を上げる王女に襲いかかったのだ。

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ここまで読んで有難うございます。

王女の運命やいかに?

次回ヒーロー、いえ、ヒロインの登場です!

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