君は掃除道具入れに入ったことはあるか!?

@Sumito21

第1話

もうすぐテストだ。

 

もちろん、いつもすべて100点。


・・・とは、言えない。

国算理英すべていつも100点のこの僕が、いつも苦渋の思いをしている科目が存在する。

 

社会科だ。


こいつだけいつも100点がとれない。

完璧の中に美しさを見いだす僕としては悔しい限りだ。

だから、僕は考えた。究極の方法だ。

 

カンニングだ。


一度くらいはこの科目を見返してやりたい。背に腹は替えられない。

しかし、最近は「スマホは鞄にしまったか、電源は切ってるか、イヤホンはしていないか」などと何かとうるさい。今まで安易なカンニングをしてきた奴らのせいだ。

 

こちらはその辺に抜かりはない。古典的な方法で行く。


周りをチラチラ見る?僕の席は窓縁の一番後ろだ。アニメの登場人物がよく座る席だ。(厳密にはその一つ前が多いような気もするが。)

しかし,こちらが周りの生徒のテストをのぞき見るには少々限定的な場所だ。そもそものぞき見るテストが間違ってたら意味がない。

 

だから、天井に直接書き込むことにした。

テストの時にさりげなく天井を見上げるようなふりをした時、そこに答えは存在している。


バッチリだ。

 

放課後にクラス全員が下校した後、脚立を持ってきて答えを書き込むことにする。

1階の倉庫から脚立を持ち出すとき、「どうしたの、何かあった?」と誰かに聞かれても、替えの蛍光灯を持っておけば何の違和感も感じられない。

先生から、「お、替えてくれるのか,ありがとう。」なんて、礼を言われるかもしれない。

しかし、蛍光灯の替えと脚立を一緒に持って3階まで上がるのは結構骨が折れた。


手を骨折した日には目もあてられない。

 

脚立の上に座り、天井にテスト範囲を書き込んでいく。

下で誰も支えてくれる人はいないので、バランスを取りながら。


試験範囲はルネサンスの辺りだ。

中学の社会科は基本、日本史なのに、なんでその辺りだけヨーロッパ文化が出てくるのだろう。突然にだ。で、何事もなかったように江戸時代に戻っていく。徳川家康もビックリだ。


脚立から落ちないように、左手で天井を押さえながら書き込んでいく。

ルネサンスの頃、大聖堂の天井に絵を描き込んでいた画家がいたそうだが、その気持ちがわかるような気がした。


天井の色に近い色の色鉛筆で書き込んでいく。

どこが出ても大丈夫なようにしっかりと。

首が痛くなったが完璧だ。

 

テストまではあと3日。その間も抜かりはないようにしなければならない。

もし、誰かが天井を見上げそうになったとき、床に大量のビー玉を転がした。

大きな音と共に教室一杯に転がるビー玉。もう、誰も天井など見向きもしない。

「なんでこんなにビー玉なんか持ってるんだ」との声も聞かれたが、持ってくるの重くて大変だったんだ。

 

授業中に数学の先生が「テストまであと数日だな。ちょっとストレッチでもしとこうか。全員立って、上を見て両手を伸ばして」なんて言いやがるときがあった。


すかさず「ああっチョコプラや!?」と叫んだ。

「新しいカギか!?」とみんな、窓際に殺到。後で怒られたが。

 

さて、当日を迎えた。

試験用紙が配られた。やっぱり難しい。

予定どおり、天井をさりげなく見上げる。

 

予期せぬ事が起こった。


薄い。字が小さすぎる。

見えない。


そこで椅子の前の方に座り、体を斜めにし、上を見上げる体制に切り替える。それでも見づらいので椅子を斜めに傾けて二本足になる。

すると、そのまま席は後ろに倒れ、ひっくり返って掃除道具入れにぶつかる。

掃除道具入れの扉は薄いので、そのまま頭から扉をぶち破り、掃除道具入れに突っ込んだ。

 

ミケランジェロだけは書けた。

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