第3話 ワイ力

「日本怪異猥化表現会」








 日本のイラストレーター、エロ漫画家、官能小説家が中心となって結成した民間非営利組織。


 日本全国の怪異の弱体化と怪異被害の抑止を社会的使命として、SNSやWeb小説投稿サイトなどを中心に活動している。


 主な活動内容は、日本に出現する怪異を題材としたエッチなイラスト、漫画、小説の描画・執筆と投稿である。




 エロとは恐怖の対極に在るもの。


 よく死を象徴する幽霊は、生を生み出す行為である性産行為が苦手だとされる。




「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という言葉にあるように、怪異は人間が現実の事象を誤認することで発生することが多く、誤認の原因は往々にして恐怖の仕業である。


 件の「姦姦蛇螺」も人々の恐怖を掻き立てて楽しませるために作られた怪談から産まれた怪異である。


 ならば、その怪異をエッチにしてしまえば良い。




 例えば、現代の怪異「八尺様」は猥化怪異の好例である。


「八尺様」は、応急的な対処は他の怪異と比較しても、個人レベルで可能なほど簡単だが、抜本的な対処は神職・僧侶複数名の協力が必要不可欠という、極めて執念深く厄介な怪異である。


 魅入った人間に執着し、対処を誤れば殺害される可能性が高く、2000年代後半に大量発生して数多の人間が落命した。




 それが現在では、男性を通り魔的に捕まえて「尺八しゃくはち」するだけの怪異に変質した。


「八尺様」は女性的でグラマラスな肉体をしていて、加えて高身長というチャームポイントがあるため、男性諸君の恋心とスケベ心を鷲掴んで止まないのだ。




「姦姦蛇螺」も、「日本怪異猥化表現会」による「姦姦蛇螺」を題材としたエロ絵・エロ漫画・官能小説の積極的な投稿・刊行が行われており、猥化に成功していた。




 照彦が鼻血を噴き出したのは、「姦姦蛇螺」が破廉恥な格好になっていたからである。




 エロはPower!!


 エロはStrong!!!


 エロはMagnificent!!!!




 人々の恐怖を背負って威張っている怪異なぞ、エロの前には地をせこせこ這う蟻に等しく無力なのだ。

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