遊ぶぶ部っ!
きとまるまる
第1話 プロローグ
「わ、私……あ、あなたのことが、大好きです!」
ショートボブの髪が揺れる。二人の視線が重なり合う。
なんの捻りもないシンプルな言葉。なのに胸から離れない。何度も何度も、頭の中で再生される。
一目で恥ずかしがっていることがわかる顔色をしている、目の前の女の子。それでも視線を外さない。真っ直ぐに見つめてくる。僕も視線を逸らせない。彼女から目が離せない。
沈黙が続く。言葉は出ないが、想いは底から溢れ出てくる。止まらない。止まれない。
想いが、溢れる。
「いいなぁぁ〜……!」
広げていた漫画を一度閉じて、仰向けに寝返り天井を見つめる。両の手で自分の顔を隠し終えると、目の前に広がる暗闇に、先ほど目に焼き付けたワンシーンを思い描く。
「う、羨ましい……! 僕も、あんな可愛い子に告白されてみたい……! あんなキュンキュンする恋がしたいなぁ〜……」
一週間後には、先ほど読んでいた漫画のヒロインたちと同じ高校生となる。
恋愛をする=薔薇色高校生活というわけではないことはわかっているけど、ラブコメを見まくってきたせいでどうしても思い描いてしまう。
クラスで人気の女の子と二人だけの秘密を共有して急接近したり、よくわからない部活動に入部して美女とお近づきになったり、食べてばかりの負けヒロインとなんやかんやで相棒みたいになったり、隣の女の子がボソッとロシア語でデレてきたり、天使様と部屋が隣同士だったり……。
「流石に夢見すぎだよな」
とんちんかんな妄想を軽く笑い飛ばし、スマホを手にする。画面に映り込む平凡な顔に対して『現実を見ろ』とビシッと言い放つ。
が、人生は何が起こるかわかったものではない。その言葉通り、もしかしたら僕の夢が叶う可能性もゼロではない……はずだ。
叶いもしない夢を捨てきれず、迫り来る高校生活に思いを馳せ──僕、
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