番外 彼らの言葉は澄んでいく
――私、これからどうなるのかな。今までずっとこの人に取り憑いていたけど――。
――心配するな。このまま、死ぬまでついていけば良いさ。もう行く宛もないのは君も知っているだろ――。
――いや、そうなんだけどさ。私は正直言ってまだ悔やんでる。あの日のこともそうだし、カイに伝えてあげられないことも――。
――こればかりは仕方ない。そもそも、何故取り憑いていられるかもわからないんだ。この意思を持ち続けていられるのも、たぶんコイツのおかげだからな――。
――私達は何もできない。元々、もう死んでるから……。その通りだよ。だけど、私はカイともう一度話したいんだよ――。
――こりゃまた……欲が出過ぎだよ。そんなに彼が好きだったのか? それならいっそ、彼に取り憑くみたいなことをすれば良い――。
――できると思う? それは流石に――。
――いや、信じる。コイツに取り憑けたぐらいの奇跡をもう一度起こせるかは分からんがな。そうすれば、こちらも満足して、居なくなれるかもしれないな――。
――消えちゃいけないよ! まだ居て欲しいのよ、あなたは――。
――正直、もう良いんだ。さっきはずっとここにいれば良いなんて言ったけど、ヤケクソだ。俺ももう、死んでから十年なんだ。グズグズとコイツの中で悩んでいちゃあ、女房にも申し訳ない。……先に逝っちまった俺が悪いのは百も承知だ。だから、俺も君と同じようにしたいんだ。……分かってくれるか――。
――えぇ、あなたの境遇を聞いたのは初めてだよ。これまで、自分を語ることは少なかったじゃない? 思い切ったね――。
――君も最近はよく話してる方だろ。今までは一言も話していなかったじゃあないか。お互いに、未練が落ち着かない、か――。
――そうね。まだまだ、ここに居たいな、やっぱ。ちょっと、あなたと話してみたい。面と向かって――。
――ハッ、良いじゃないか。コイツも残り少ないだろうが、まだまだ楽しめそうだな――。
――これからよ、本番は。この人もなんだか、心意気が強くなったみたいだし、何かいい方向に動くんじゃないかな? 私はそう、信じたい――。
――俺たちと、同じ道を辿らないことを祈るばかりだな。せめて、自分の意思で死んで欲しいもんだ――。
――大丈夫。私達がついているから。ね、リンちゃん――。
『ありがとう。頑張ってきます』
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