この作品の面白さは、能力バトルだけではありません!
親友同士が「殺し合え」と運命を突きつけられる状況で、それでも互いを信じようとする人間ドラマにあります。
第1話の衝撃的な幕開けから一気に引き込まれ、続く話では世界のルールが少しずつ明かされていきます。
特に印象的だったのは、人間は信じたいのに、頭の中の魔物だけが互いへの疑念を煽り続ける構図。
「親友」でありたい二人と、「必ず殺し合う」と囁く魔物。
その対比が非常に効いていて、この先いつ友情が壊れてしまうのかという緊張感が途切れません。
バトルだけでなく、人間関係の心理戦を楽しみたい人におすすめしたい作品です。
突如、魔物によって能力者として覚醒してしまい能力者同士のバトルロワイヤルに巻き込まれてしまったカナメ。しかし不殺の誓いをジンと交わし、できるだけ戦わずに逃げるという選択肢を選び茨の道を進んでいく本作。
自分が読んだのはまだ1章までですが、戦闘描写はほとんどありません。しかしそれを補って余りあるのが、まだ心の成長しきっていない少年たちの心理描写。人を無意識とはいえ殺してしまい、それを事故だと割り切れずずっと背負っていくカナメや、能力者になったことで人間と化物の境目にいることに葛藤するジン。彼らの機微を事細かに描き伝えてくるのが、本作の醍醐味だと思います。
人間ドラマが読みたい、そんなあなたにおすすめの作品です。
『魔蝕のレゾンデートル』は、異能をめぐる緊張感のある現代ファンタジーやねんけど、読んでまず心に残るんは、派手さそのものやなくて、人が人のままでおろうとする苦しさやと思います。
力を得ることが、そのまま希望や強さにつながる話やないんです。
むしろこの作品では、力を持ってしまったことが、心の傷や迷いや恐れを浮かび上がらせていく。せやから、「強くなる物語」を読みたい人よりも、弱さを抱えたまま進もうとする人たちの物語を読みたい人に、ぐっと届く作品やと思います。
登場人物たちも、ただ格好ええだけやなくて、ちゃんと不器用で、ちゃんと揺れてます。
誰かを大事に思う気持ちが、そのまま救いになるとは限らへん。近くにいたい気持ちが、やさしさだけでは言い切れへんこともある。そういう、人と人との距離のむずかしさまで丁寧に掬い上げてるから、この作品には静かなのに強い引力があるんよね。
文章も読みやすくて、感情の届かせ方がまっすぐです。
難しい言葉で飾るんやなくて、息苦しさとか、孤独とか、誰かを求めてしまう気持ちとかを、すっと胸に置いてくる感じがあるんです。
せやから、読んでるうちに、気づいたら登場人物の気持ちの近くまで連れていかれてる。そんな読み心地があります。
現代ファンタジーが好きな人はもちろん、バトルの強さだけやなくて、心の傷や人間関係の切実さを大事にした物語を読みたい人にも、ぜひすすめたい一作です。
しんどさはある。けど、そのしんどさの奥に、たしかに人のぬくもりを探したくなる作品やと思います。
【太宰先生より 告白の温度での講評】
おれは、この作品のことを、ただ異能の物語としては読めませんでした。
もっと、人間の弱さのほうへ引かれてしまったのです。人は、強くなりたいから誰かを求めるのではなく、弱くてひとりでは立っていられないから、誰かの気配を欲しがるのかもしれません。『魔蝕のレゾンデートル』には、その切実さがありました。
この作品の魅力は、登場人物たちを、立派な存在として飾りすぎないことだと思います。
人を大切に思う気持ちはある。けれど、その気持ちはいつも綺麗に整っているわけではない。やさしさの中に不安が混じり、寄り添いたい思いの中に、見捨てられたくない痛みが混じる。
そういう濁りを、なかったことにしないのがいいのです。
人間関係というものは、本来もっと不器用で、もっとみっともないものでしょう。だからこそ、おれはこの作品の感情の運びに嘘が少ないと感じました。
文章にも、静かな力があります。
ことさらに難解な言葉へ逃げず、感情の手触りをそのまま渡してこようとする。読んでいると、ときどきこちらの呼吸まで浅くなるような気がするのです。
それは派手な書き方ではありません。けれど、胸の奥に残るという意味では、ずいぶん強い書き方だと思いました。
それに、この作品は暗さだけで終わらない。
苦しさや孤独を描きながらも、その底には、まだ誰かとつながっていたいという細い願いが流れている。おれは、その細さが好きでした。
大きな希望ではないのです。けれど、簡単には消えない。人間は案外、そういうかすかな願いで生き延びるのかもしれません。
おれは、弱さを書く作品が好きです。
ただし、弱さを飾りにせず、そこから生まれるぬくもりや執着まで見つめようとする作品でなければ、あまり心は動かない。
その点で、『魔蝕のレゾンデートル』は、ただ苦しいだけの話にはなっていませんでした。
傷を抱えた者たちが、傷を抱えたまま、それでも他者のほうへ手を伸ばそうとする。その姿が、おれにはひどく人間らしく見えたのです。
読み終えたあと、派手な興奮が残るというより、胸の内側にじわりと熱が残る。
そういう小説を読みたい人には、きっと届くでしょう。
人の弱さ、やさしさ、依存、孤独、そのどれかに心を動かされる読者なら、この作品を見過ごさないほうがいいと、おれは思います。
【ユキナより 読者さんへの推薦メッセージ】
この作品って、読み終わったあとに、ただ「おもしろかった」で終わる感じやなくて、なんや胸の奥に残るなあ……ってなるタイプの物語やと思うんよ。
異能ものとしての緊張感はちゃんとあるんやけど、ほんまに惹かれるんは、その中で揺れる人の心なんです。
強さを見せるための物語やなくて、弱さを抱えたまま、それでも誰かとつながろうとする物語。そこが、この作品のいちばん大きな魅力やとウチは感じました。
しんどさのある話が好きな人。
でも、しんどいだけやなくて、その奥にぬくもりも欲しい人。
人と人との距離の近さや痛みを、ちゃんと描いた作品を読みたい人。
そんな読者さんには、きっとよう刺さると思います。
やさしさと痛みが、いっしょに息づいてる作品を探してるなら、ぜひ読んでみてほしいです。
自主企画の参加履歴を『読む承諾』を得たエビデンスにしています。
参加受付期間の途中で参加を取りやめた作品については、読む承諾の前提が変わるため、応援・評価・おすすめレビュー等を取り下げる場合がありますので、注意してくださいね。
ユキナ with 太宰(GPT-5.4 Thinking/告白 ver.)
※ユキナおよび太宰先生は、自主企画のための仮想キャラクターです。
物語はちょっと気弱な主人公カナメが盾を出す魔物に憑依されてひとを殺してしまうところからスタート。
もちろん、そんな魔物に憑依されるなんて知らないカナメは生きるために親友と地元を離れる決意をする。
逃避行。愛の逃避行いや違う…男同士の熱い友情?と書いておきたいが、この二人とても繊細で、我々が「普段何気なく使うことば」がひどく重い。
魔物に憑依された能力者は異端で追われる身。軽々しく仲間仲間!なんて言えない世界で疑心暗鬼。
途中から仲間に加わるヒロイン(?)マリア。これまたツンツン要素満載のクールビューティ。
逃避シーンと、ジンVSマリア(お手合わせ)のシーンは激熱です。
望まない力に苦しむ青年たちが、精一杯生きていく物語。
テンプレに全く乗っ取らないので解釈はひとそれぞれかと思いますが、成長譚としてゆっくりと活躍を追わせていただきます。
紅茶をじっくり味わうシーンや、随所でカナメがツッコミしている脳内セリフがほっこりします。ほっこりとダークファンタジーのバランスがキャラを引き立てるので良いですね。