氷の皇子は、祝福の熱に溶かされる ~冷徹な皇子に嫁いだはずが、いつの間にか極甘に溺愛されています~

Sakuya.

嫁ぎます!お相手は氷の皇子!?

プロローグ:祝福に愛された食いしん坊王女

「……見つけたぞ、ライラっ!

逃げても無駄だと、何度も言っただろう?」


自信満々のドヤ顔を浮かべて近づいてくるこの人は、私の兄・テオドール。

(こう見えても、一応、一国の王子なんです!)


「げっ……また見つかった……!?」


今日もまた、私の華麗なる逃走劇は、開始数分であっけなく幕を閉じた。


「可愛い可愛い妹よ! 今日こそは僕の公務に同行してもらうぞ!

いいかい? お前は僕の隣にちょこんと座って、その“国宝級の微笑み”を振りまいていればいいんだ!」


「いえ……お兄様。お気持ちは嬉しいのですが……私はスコーンを──!」


「そんなものは後だ!」


ガシッ。


有無を言わさず腕をつかまれ、そのままズルズルと引きずられていく。

兄の常軌を逸した執念とシスコンぶりは、もはや国中の名物である。


(ほんと、お兄様ったら……。“ライラ追跡機能”でも埋め込まれてるのかしら?)


口いっぱいのスコーンを慌てて飲み込みながら、私は心の底からため息をついた。



私、エレドーラ王国の王女ライラは、極度のシスコン兄に悩まされながらも、そこそこ平凡な日常を送っている。


ほんの少しだけ、人と違うところといえば──

世界的にも珍しい《祝福の魔法》という光属性の魔法を受け継いでいることくらい。


……といっても、すごい魔法なんかじゃない。

庭の花を元気にしたり、お菓子をちょっと美味しくしたり。

(正直、宴会芸レベルの魔法です!)


だから私はずっと信じていた。


この平凡で、やわらかくて、温かい毎日が──

明日も、明後日も、その先もずっと続くのだと。


……あの、一通の手紙が届くまでは。

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