大人

後東間 架流

♦️

早く大人になりたいな。

でも大人になるってどんなことなんだろう。


窓の外で小学生が叫んでいるのが聞こえる。楽しそうだな、元気いっぱいだな。

よし調べてみよう。スマホは・・・コンセントのところか。取りに行くのは面倒くさいな。パソコンを開いてみよう。虫眼鏡の横に「大人になるということ」と入れてみる。

なるほど大人になるということはエッセイを書きたくなるということなんだ。私のパソコンの画面にはたくさんのエッセイが一覧されてるんだから。変なの。

インターネットを開発した人はすごいと思うけど、辞書を発明した人のほうがすごいと思う。だって私でも簡単に使えるんだもの。

えっと、何を調べようと思ったんだっけな。

ああそうだ。大人になるということは・・・さてどうやって調べようか。

大人の人について調べてみるか。「一人前の人、成人。」んなわけないと思うけどなぁ。だって一人前じゃない成人もいるもの。もしかして私が一人前じゃないから大人の人を一人前じゃないと思うのかな。それだったら失礼な私でごめんなさい。


うーん。ちょっと疲れたから散歩してみようか。

歩くっていうのは大事だと思う。どこかの誰かさんが歩くと幸せホルモンが出て気分がよくなるって言ってた気がするし。


私がドアを開けただけで、風が髪の毛を巻き上げていく。外の世界に嫌われているのだろうか、私。


大人の反対って子供かな。子供と大人。反対のようだけどやっぱりこの並びだと老人も追加してあげたいな。緑色がない三色ボールペンみたいにさびしいもん。子供と大人と老人。いい響きだけどやっぱり何か違うかもしれない。


あ、さっきの声の子だ。小学生かな。私にも小学生のころなんてあったのか。今中学三年生だから、、、6年ぐらい前かぁ。さぞかしませたクソガキだったんだろうなぁ。今この子友達に死ねって言った?口が悪いね。人に向けて使う言葉じゃないよ。お姉さんが教えてあげよう。やっぱりやめとこうかな。なんていえばいいのかわかんない。大人の人は上手に対応できるのかな。そうだとしたら私はやっぱり子供だな。


あれおかしいな。散歩したら気分が晴れるはずなのに。私の気分はマリアナ海溝の底まで落っこちちゃったらしい。困ったな。水圧が高いから私の気分はちっちゃくなって帰ってきちゃうよ。おーい、帰って来い私の気分。


歩き疲れたかもしれない。ちょうど目の前に駅がある。よかったスマホにイコカが入ってる。窓の外は黄金色。黄金色はきれいだけど、見てて楽しい風景じゃない。どうせならおっきなビルとかが見てみたいけど、都会は人が多いから嫌いだな。両方同時にかなえられる魔法ってないのかな。


大人が何なのかは知らないけど、大人になったら好きな作家さんの本をそろえたり、世界中を旅してみたりしたいな。あれこれって子供でもできるかもしれない。大人になったら自由とか言ってる人はいるけど社会の授業で自由には責任がついてくるって先生が言ってた。責任は嫌だな。責任がない自由って何処かにないかしら。


あれ?もしかしたら子供は責任がない自由を持っているのかもしれない。なら大人にならなくてもいいか。大人になるっていいことじゃないかもしれない。

いつかきっとなるんだから、子供を精一杯楽しんだほうがいいのかもね。けどどうせ私のことだからまたどうでもいいことを見失うよね。そんなときのために残しといてあげる。未来の私、ちゃんと生きてるかー?




ホームを出た私の目の前を、きれいな紅葉が通り過ぎる。

大人になるまであと3年の、ある秋の日。

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