第十二話 疑いと物的証拠、嫉妬と怒り

 ここ最近、主人の様子が変だ……。 何か隠し事をしているみたい。 たまに挙動不審な行動をとったり、その場しのぎに何かごまかしていたり、思い当たることがいくつもある。

 例えば、貴方が最初の不審な外出をした時、貴方が着ていたもの。 それ、貴方が二十歳くらいの時に着ていたものでしょう? 覚えてるわ、貴方その格好でよく他の女の子とデートしてたでしょ?? どうしてただのライブパーティーなら、歳相応のお洒落をしないの? それくらいは自由にしても良いのよ?? それとなんで出かける前日にパーマなんて掛けてたの?  私以外に目の前で格好つけたいオンナなんているの。

 それに二回目に出かけたときの深夜の帰宅。  出かけるのは良いけどどこに行くかは話をすり替えたわね? しかも、私が忙しいのにかこつけて! しかも、突発的に出掛けるとか帰りは終電になるかも、とか……。 本当は、何処へ行っていたの??

 あと、三回目の外出の時。 私、用があって一泊してくるって言ったけど、何処に泊まってたと思う? 貴方が仕事でちょっと遠くへ行くって言ったから、許可したのに……貴方ったら普段着で何処まで行ってたの?? 帰り、遅かったよね??? 私、最寄り駅近くの深夜までやってる喫茶店で張り込んでたの。 そこでその日のうちに普段着で私の後に出かけて、喫茶店の閉店一時間前に店の前を同じ普段着で、いい気になって帰って行く貴方を目視で確認したの。 それから、隣のインターネット喫茶で一泊して翌日昼間に素知らぬ顔で帰ってきたの。 貴方がその日に着ていた普段着の黄色いシャツ、なんかたこ焼き臭かった。 お祭りに行ったわけでもないのに、煙たい臭いだったよ、何処で何してたの?

 この間、貴方の部屋の中のゴミ箱を偶然倒してしまった時、中から破れたレシート片の塊が出てきたの。

 私、ジグソーパズルが好きでね。 そういうの貼り合わせて復元してみたくなるのよね。 ……で、やってみたわけ。

 するとね、私が貴方に勝手に出かけることを許可していない場所のレシートだったの。 主なものは、渋谷の餃子屋さん、ラブホテルのレシート、横浜のイタリアンバル、『俺の部屋』のレシートと、会員カードをハサミで二十等分に裁断したの、エト・セトラ……。

 まだ物的証拠が見つかってないの、決定的なやつ……。 はっきり解るものが欲しいわ。 そう言えば、貴方の鍵が付いたたデスクの引き出し、閉まってたわね。 どうして鍵がかけてあるの? 貴方いつも鍵なんて掛けないでしょ?? よっぽど大事な物が入っているのね? 鍵をよこしなさい!!






 疲れて帰ってきた貴方……。


「お帰りなさい」

「お疲れ様」

「お風呂沸いてるわよ」


 たまたま私の帰りが早かったの……。 だから、お夕食の用意もしたしお風呂も沸かしておいた。 貴方ったら、おぉいつもと違って優しいね、なんて喜んじゃって……。 だけれどもね、その優しさは私の貴方に仕掛けた罠なの。 ほんとは優しくなったんじゃないの。 貴方の本心を探るために甘いマスクを被ったの。 偽りなのよ! 貴方は勧められるままにお風呂に入って晩酌をしてくれた。


 ……引っ掛かったわね? その貴方が今一気に煽ったビール、睡眠薬が入ってるのよ。


 案の定、食事中に眠気を催した貴方はベッドへ向かった……。

 しばらく経ってから貴方の部屋に向かったら貴方はベッドの上でぐっすりと寝てた。 安心したわ。 これで心置きなく鍵を探せるってね! 鍵は意外なところにあったわ。 見つけるまで時間がかかったけど。 ……まさか、鍵を赤い林檎に挿しておくなんてね、何考えているのかしら、馬鹿ね!

 とりあえず、鍵は見つかった……。 あとは引き出しの鍵を開けるだけ。

 デスクの鍵を開け、引き出しを引くと、中には無○良品の紙袋があった。 パンパンに膨れた紙袋の中を覗くと中には女性物の下着……しかも臭いからして『使用済み』。 貴方これどういうこと!? しかも、一組じゃなくて、四組!? 何なのこれ!? 説明して頂戴!! (髙橋は、遠藤と逢う度に『戦利品』と称して下着を一組ずつ『持ち帰って』いた、そしてそれを大事に紙袋に入れてデスクの引き出しにしまっておいたのだ)






 (※)その後、夫は妻に叩き起こされ、血祭りにあげられました!


 

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