第三話 美術サークル打ち上げの後
俺は今、胸の高鳴りを抑えながらベッドの上で掛け布団を抱きしめている。
……ぎゅ〜っ!!
使い古した自分のベッドを軋ませながら、俺は身悶えしたり寝返りを打ったり、気になる女性の名前を口ずさんだり。 先程の『美術サークル』の打ち上げのあとに唾を付けておいた若い女性を想った……。
「……あゝ、遠藤さん」
俺はおもむろにベッドの上で起き上がるとそこから下り、静かに先程持ち歩いていた革製カバンに歩み寄る……。 ここには『遠藤』という苗字の若い女性から奪い取った『戦利品』が入っている。
……ふふふふ。
静かにほくそ笑むと俺は、ゆっくり留め金を外し、鞄の蓋を開ける。 右手を突っ込み、女性物の使用済みの下着一組をそっと取り出す。 下着の温もりは冷めてしまったが、カノジョの残り香がふんわりと香る。
……あゝ、遠藤さんのにほひがする。
先程、彼女に公園で壁ドンし、強く迫った時の記憶が蘇る。
「また何処かで会えないかな?」
俺は右手に下着を掴んだまま、デスクに近づくと鍵付きの引き出しを開けた。
……このまま戦利品を引き出しに入れるのは無作法だな?
と辺りを見渡すと、無○良品の丁度よい紙袋を見付けた。 下着を丁寧に折り畳み、しわを伸ばし、先程の無○良品の紙袋に静かにそれを仕舞うと更にそれを引き出しにそっと忍ばせる。 音を立てないように慎重に引き出しを閉めると鍵を掛けた。 冷たい、カチリという金属音。俺は悦に入ると、そのまま何事もなかったかのようにベッドに戻り、布団を被って朝まで熟睡した。
翌朝目覚めると、俺は昨夜のことなんて綺麗さっぱり忘れてしまった。 そして、いつもの様に仕事に出掛けていった……。 暫くは何の音沙汰もなかった……。
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