第二話 渇望(かつぼう)

 「ねぇ、今夜どう?」


俺はカミさんを誘ってみた。


「痛いから嫌!!」


カミさんは拒絶した。 彼女は俺の手を振り払うと畳んだ洗濯物を持って息子の部屋に持って行ってしまった。


「……ちぇ!!」


 実を言うと、俺は近頃カミさんとの夫婦の時間が取れず彼女に対する寂しさと欲求不満、つまり『セックスレス』に悩まされていた。 子供が生まれたばかりの頃は二人目も……と考えて、生まれたばかりの赤ん坊のそばで夫婦の営みをしていたが、やがて最初の子が大きくなり『発達障害』の診断を医師に下されるとカミさんはただでさえ息子に愛情を掛けすぎていたのに尚の事息子を可愛がり、俺の事を邪険にするようになった。 続いてアイツがもっと歳を取り閉経が近い年齢になってくると、行為の最中に痛みを催すようになり相手をしたがらなくなる。 その上俺がそういった『嗜好』からまだ抜けきらないのに嫌気が差し彼女は俺に愛想を尽かせ、無視とは言わないまでも構ってくれなくなった。


 ……淋しい。


 俺は自分に取って『家族とは何か』が分からなくなってきていた。 カミさんは冷たい。息子は『発達障害』のせいで対人トラブルを頻繁に家庭に持ち込む。


「もう、やり切れないよ」


 俺はグラスに氷を入れて、冷蔵庫に閉まっておいた『マイボトル』のウィスキーを注ぎ、一気に飲み干した……。 俺にとってこの家は最早、苦労の多い居心地の悪い家になってしまった。 苦しくなってくるとその都度『外に』逃げ出したくなる!! ……そう、外に即ち話を聴いて慰めてくれる、昔のカミさんの若い頃に似た一時的に避難するための『他の女』に。




「誰か、俺の『セフレ』になってくれ!」

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