置いて行かれた君と仲良くしたい

川北 勤

プロローグ

小説というものは一文で表すことができる。

ミステリー小説ならばだれだれがだれだれを殺した。

青春小説ならばだれだれが成長した。

これだけで作者の書きたかったことは伝わる。


ならば、僕の物語は一文で表すとどのようになるのだろうか。

ありとあらゆる語彙を尽くして紡がれる、劇的でもなければ、波乱万丈もない平坦な道のりをただ滔々と紡がれる僕の物語はなんと表せばよいのだろう。

日村司が青山楓に恋をした?ちがうな、僕は彼女に恋をしていたわけじゃない。

青山楓が日村司に救われた?ちがうな、典型的なボーイミーツガールの顛末など僕には似合わない。

言考えをいくら巡らせてもやっぱり答えは一つに行きつくし、きっと彼女もそう考えるだろう。

だから、あえて1文に収めるならやっぱり、青山楓と日村司が友達になった。

この1文が僕と彼女の物語を表すのがちょうどいい。

さぁ、始めよう。これはただの裏話。彼女が紡ぐ奇跡の裏側、僕と彼女のただの日常の物語を。

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