第二話 天使

ブーッブーッ!!


スマホのタイマーが鳴った、寝ている俺に構わず無慈悲に


「だるい、でも起きなきゃ。」


そう言いながらタイマーを止め、起床すると支度の準備をする。


今日も一日が始まる 戻ることのない時間がゆっくりと刻まれ続ける。


「行ってきます」


そう言いドアを開けた

だがなぜ誰もいないのに行ってきますというのかが疑問だった


外に出る心地良い風と暖かさが俺の身を包んだ

それだけで春だと分かる


「春か、もう」

「春にはいい思い出がないんだよな・・」


別に恨んでる訳じゃない、だって彼女にも”理由わけ”があったんだろうから


「もう考えないようにしないと」

逃げたかった、その事実から



起立!気をつけ!礼!着席!

先生がそういうと皆んなは座る


「一時間目は数学か、めんどくさいな。」

「一応授業聞いてるフリだけしとくか」


心の底では怠けてはいけないと分かっていてもやる

それが人間だ


キーンコンカーンコーンキーンコンカーンコーン


一時間目、二時間目、三時間目とボーっとしているうちにも時間は過ぎていく


そして放課後・・


「これでHRを終わります。」


「あーやっと終わったー」

「今日帰りお前の家行っていい?」

「いや俺部活あるから無理」


そう言うクラスメイト


今日の授業が終わり、それぞれ部活やバイトなど自分がするべき所へと歩いて行く


「俺は家に帰るか」



・・この校門を見るのもあと少しで終わりだな


春の風と暖かさに包まれながら黄昏ていた・・


「そういえばこの学校桜の木いっぱいあるよな」


フュ~ ヒュウ〜

風が吹き桜の花びらが宙を舞っていた、風に身を任せながら


「あっ」


瞼に桜が張り付く


俺が瞼に付いた桜を払おうとした時・・


「え?」


そこには忘れようにも忘れられない

考えないようにしていても考えてしまう

だって、だってだって


人間ヒトだもの


恐怖だとか、動揺だとか、悲しみだとか、疑問の前に


『”彼女”がいたから』


「君、三年前に屋上で俺と会わなかった?」


「・・そうだよ。」



さも当たり前かのようにあっさりと言った


「でも君三年前に死んだはずじゃ。」

「死んだよ」


今更恐怖、疑問色々な感情が込み上げる


動揺している俺に彼女は言った


端的に それが当然かのように


「天使になったの」 


 ”天使だと”

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