【三章終了】神様、探偵チートじゃ戦えません!【四章更新中】

雨墨篤@「ニセ魔法使い~」漫画連載中!

0話 読み飛ばしてもいい程度のプロローグ

 異世界転移――。


 それはラノベなどで人気のシチュエーションで、一人ないし複数の人間が異世界へ飛ばされる物語の事を指す。

 異世界転移してから始まる活躍は、冒険活劇やスローライフ、内政ものや恋愛ものなど多岐のジャンルにわたる。

 これから語るお話も、そんなありふれた異世界転移の物語だ。


 ただ一つ違うのは、ジャンルが異世界転移には珍しいミステリであること。


 そう、ミステリだ。

 たとえこの先、読者に――


「え、これホントにミステリなの?」

「それにしては事件と関係ないこと多くね?」

「つか謎解き簡単すぎw」


 ――などと思われるとしても、間違いなくこの物語はミステリなのである。


 ※ ※ ※


 そこは真っ白な空間――。

 色というものが何一つなく、見渡す限りが白で埋め尽くされている。

 風一つない空も、塵一つない地面も、全てが真っ白。

 ただ遠くに地平線が、一本の線のようにかろうじて見えている。

 ――そんな現実とは思えない空間があった。


「連続爆破事件なんて、なんて事してくれたのですか!」


 そう声を荒げたのは、これまた真っ白な少女だ。

 服も髪も肌も純白で、何一つ穢れというものを知らないのではないかと思わせるような外見。

 そんな純真無垢を体現したかのような姿に似合わず、少女は全身で憤りを露わにしていた。


「おかげで予定にない異世界転移を処理しなきゃですよ! しかも八人ですよ、八人! 突発的な業務のせいで今日は残業じゃないですか! どうしてくれるんですかあの爆弾魔!」


 爆弾魔――とは物騒な台詞だ。

 どうやら彼女が騒いでいるのは、その『爆弾魔』によるトラブルが原因らしい。

 肩を怒らせ一通り騒いだ後、ようやく落ち着いたのか少女は「はぁ……」と大きくため息をついた。


「……まぁ文句言ってても仕事はなくなりませんからね。やるしかありません。雇われ女神の辛いところですねぇ」


 少女は自らを『雇われ女神』と称する。

 女神様を自称するなんて……と中二病を疑われそうだが、実は彼女、本当に女神様だったりする。

 女神らしい振る舞いなど見当たらないが、この現実離れした白い光景がその証拠ともいえるだろう。


「しかたない、順番に異世界転移させていきましょう……。頑張れアタシ! えぇっと、まず一人目は……」


 自分に活を入れつつ、女神様は何やら準備を始めたようだ。

 これは――そんなよくあるテンプレ異世界転移における一場面である。


 ――ところで。

 彼女の様子やその断片的な台詞から、何か気になる点は無かっただろうか?

 例えば――。


 この女神様はいったい何者なのか?

 女神様の語る連続爆破事件とはいったい何なのか?

 それを引き起こした爆弾魔の正体は?

 そして八人の異世界転移者とは?


 ――それらの答えを明かす前に。

 まずはこの世界で何が起きたのか、少し時間を遡り、順を追って見てゆく事にしよう。

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