六花の舞う頃
桜井真彩
六花の舞う頃
もうすぐ六花が舞い散る季節がやってくる。
この季節をまた一人で迎える。
どれだけ待ってもあの人は二度とこの場所に来ることはない。
だけど愚かな私は待ち続けてしまう。
冷えた手に息をかけてこすり合わせる。
北風がマフラーの隙間から入り込んで心までも凍てつかせる。
大切な人はいつだって手の届かない場所へ行ってしまう。
何も言わず、私の前だけから消え去ってしまう。
私だけがいつだって必死になってる。
子供のように駄々をこねて泣いて、だけどこの声は届くことがなくて。
もういい加減思い出の中のあの人にさよならをしなきゃ。
「また、来世。六花が舞ったら会いましょう」
そう言って私は待ち合わせ場所をあとにする。
北風に負けないように、寒さに負けないように前をしっかり見据えて。
マフラーをまき直して顔を上げたら、辺りは黄昏に染まる。
六花の舞う頃 桜井真彩 @minimaa
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