3:一服
***
「はあ、肝が冷えたぜ」
私は髪に無頓着なので適当に拭いて済ませたが、カインもノルマンもローランも気になるらしく、三人肩を並べて髪のセットをするのを、脱衣所の椅子に座って背中を見守る。そんなことをしながら、お眠らしいモニ太くんを拭いている。
私たちしかいない脱衣所は、それでも扇風機が常に首を振りながら動いていた。
髪をセットするドライヤーの音に紛れたその呟きは、それでも私の耳に届く。
モニ太くんが頭に瓶に入った牛乳を三つ載せろ、と言うので、その通りにすると、モニ太くんは三人にその牛乳を配ってこちらに戻ってきた。しかしやはり眠たいのか、私の太ももの間に収まった途端、電光掲示の目がうとうととしている。
「モニ太ぁ、俺とノルマンの奴ビールに変えてくんねぇ?」
その声に起こされてはっとしたモニ太くんが浮遊する。
『未成年だぞ、俺は。酒は自分で調達しろ。遠い東の国では、風呂上がりに瓶の牛乳を呷るのが仕来らしい。お前らもそれに則れ』
「都合のいい時だけ未成年なのを盾にしやがって」
カインはそう憎まれ口を叩いた後、少しだけ口にするか悩んだような間があった後、言葉を続けた。
「ま、今しか使えねぇ特権だ。行使しとけ、クソガキ」
その言葉が、どこか感傷のある言葉に聞こえた。肝心のモニ太くんはモニターの点灯をしておらず、恐らく聞こえなかっただろうが。
「ノルマン、女子組待ってる間、タバコ吸い行こうぜ」
「おっけ〜、行こう行こう」
ノルマンとそんな軽いやり取りをしながら、私の横を通り抜けて行ったカインは、先程の感傷ひとつ見えない、いつものカインだった。
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