13:吶喊

 私たちに近づいていた魔物の頭が、突如として撃ち抜かれる。その後、銃声が鋭く響いた。

 

「カインくん、悪いけど、ちょっとこいつらなぎ払わないとたどり着けないかも。十一時の方向、ぜーんぶお願い」

 

 その冷静に響く声はノルマンのものだ。

 

「うーっす。了解。んなお願いされたら断れんわ。三秒で片付けるから前方よろ」

 

 この軽薄だが安心感のある声はカインのものだ。

 

 しばらく聞けてなかったこの声を聞くだけで、特にこの厳しい状況下だとここまで安心するものなのかと思った。自分の表情が明るくなるのを感じた。

 

「ノルマン、カイン!」

「ノルマンの言う通り、確かに正面から旦那の声だわ」

「でしょー、スコープでリーダー見たもん」

「それは事実でも言うたらあかんぞー」

 

 二人の声が近づいてくる。しばらくしてから二人の姿をこちらも視認した。

 アヤノとローランが戻ってきたことからも分かるが、空間転移が解決しているから二人もこちらに合流出来たのだ。

 

「いやぁ、災難だったぜ。俺とノルマンでせっまい空間に閉じ込められてよ。カンカン音がする度にその空間が縮んでいきやがるの」

「カインくんと物理的にプレゼントになるところだったねぇ」

「あかん所からあかん音がしたわ」

 

 よりによって身長のある二人が狭い空間に閉じ込められた様を想像して、少し笑ってしまう。物理的にプレゼントという喩えが本当に妙だ。簡単に想像がつく。二人にとっては笑い事では無いのだが。

 

「でもちょうどいいっす。特にノルマンさん。知恵貸してくださいす」

「僕?」

「ん? つーか何でアヤノさんがエスっぽい喋りしてんだ?」

「それはややこしいんで説明省きますが、あたしのことはエスだと思ってください。戦力としてはエスと同じに見てください」

 

 アヤノはそう言って、花魁道中の本体がいるだろう黒いもやが見える方を指した。

 

「あっちが総本山なのは偵察して来たっす。そこにあたしとイド、……じゃなくて」

「イドさんのことは理解してる。続けて」

「そうなんすね。じゃあ続けます。あたしとイドとリーダー、ローランと……あとモニ太を連れて、先に進みたくて。……あたし達の手で、決着をつけたいと思ってて。可能すかね」

 

 名指しされたローランは意外そうに「俺?」と尋ねている。アヤノはこくりと頷いた。

 思えば、エスはローランとカルアと一緒にいることが多い。ローランに優しい言葉をかけるのもしばしばあるから、友達として見届けて欲しいのかもしれない。

 

 ノルマンはこちらを見た。

 

「構わない? リーダー」

「私は大丈夫だけど……」

「なら、可能にする。後ろは任せて。だから、ちゃんと決着つけるんだよ」

 

 昨日、ノルマンは魔物との決着を私に委ねた。その事が少し気になっているのかもしれない。

 彼の優しい声は深さがあって、それでいて心地よかった。アヤノは涙ぐみそうになったのを、乱暴に拭ってありがとうございます、と言った。

 

「エス・スティングレイ。吶喊するっす!」

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