【切ない恋愛小説】ひとつだけ願いが叶うなら ~タイムリープと運命の選択~

雨音|言葉を紡ぐ人

第1話 失った未来

大輝が死んだのは、三月の雨の日だった。


交差点で信号待ちをしていた彼に、ブレーキの故障したトラックが突っ込んできた。即死だったという。


葬儀が終わって、一週間が経った。私は、まだ現実を受け入れられなかった。


「なんで、大輝が...」


部屋で、彼との写真を見つめた。笑顔の大輝。優しかった大輝。もう、会えない。


スマホには、事故の前日に送った彼とのメッセージが残っていた。


「明日、会おうね」


「うん、楽しみにしてる」


それが、最後のやり取りになった。


もし、あの日会わなければ。もし、違う道を通っていれば。もし、信号が変わる前に渡っていれば。


「もし」を繰り返しても、現実は変わらない。


夜、疲れて眠りについた時、不思議な夢を見た。


真っ白な空間に、一人の女性が立っていた。


「あなたに、力を授けましょう」


女性が言った。


「力...?」


「ひとつだけ、過去を変えられる力です」


心臓が跳ねた。


「過去を...?」


「はい。でも、条件があります」


女性は続けた。


「変えられるのは、ひとつの出来事だけ。そして、何かを変えれば、必ず別の何かが変わります」


「それでも...大輝を救えるなら」


女性は悲しそうに笑った。


「本当に、それでいいのですか?」


目が覚めた時、手のひらに不思議な光が宿っていた。

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