雨の降る日。
朝日が昇る前の暗闇。
そして、大勢の人が行き交う東京の街。
描かれているのは、私たちの日常にもある風景です。
けれど、この短編集では、そのすぐ隣に、名前をつけることのできない“何か”が静かに息づいています。
懐かしいのに寂しい。
穏やかなのに、どこか心許ない。
優しいはずなのに、なぜか胸の奥がざわめいてしまう――。
物語によって異なる感情を残しながら、どの一編も、すべてを説明し切ることなく幕を閉じます。
だからこそ、語られなかったものを自分なりに想像し、登場人物の見た景色をもう一度振り返りたくなりました。
読んだ人の数だけ、物語の答えが生まれていく――。
短い物語の中に、静かな余韻と不思議な世界が広がる短編集です。