入れ替わり
夜、アベル王子はカインにメーロン伯爵のことをお話になられました。
「民が玩具ではないだなんて、そんなの当然さ。国民あってのぼくら王族や貴族なのに……メーロン伯爵は何であんなことを言うんだろう」
王子が言うことをカインは何ともいえない顔で聞いていて、特に返事はしませんでした。
「そうだ、これお母様にどうぞ」
王子はカインの様子がおかしいことに気がつかず、布の袋に入ったパンを手渡します。
カインはそれを受け取ると、真剣な顔で言いました。
「お前って、おかしいけど……優しいヤツだよな」
何故そんなことをカインが突然言い出したのかアベル王子には分かりませんでしたが、悪い気持ちにはなりませんでした。
「前におれになりたいって言ったよな」
「うん、言ったけど……」
言ってはみましたが、どうにもならないことなのであまり考えないようにしていたそれに触れられて王子は戸惑われます。
「おれ達さ入れ替わらねぇか? こんなに似てるんだ、誰にもバレねーよ」
「入れ替わる?」
「勿論ずっとってのは無理だからさ、時々な。お前はおれになって外へ出ればいい。おれはお前になって……何か贅沢でもするからさ!」
カインの提案は王子にとって大変魅力的でしたが、気の弱いアベル王子は頷くことは出来ません。
「最初は3日後でどうだ? 夜明けに来るからその時に服を取り替えようぜ。なぁ、いいだろ?」
「う、うん、」
「よしっ、約束な!」
カインに強引に迫られてアベル王子は約束をしてしまわれました。ですが10年もの間憧れた王宮の外へと出られると思うと心臓がドキドキと鳴り始めるのでした。
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