心音
カザミタチカゼ
第1話
am3:45
例年、地球温暖化やら暖冬やら話を聞くけれど11月にもなると流石に寒い。俺は携帯から鳴るアラームを速攻で止めて暖かい布団に潜り込む。しかし、すぐにもう一度鳴り出して俺の眠りを妨げる。
「さっむ。」
諦めて布団から起き上がり携帯を取ってアラームを消す。部屋の電気を付けて運動着に着替える。
玄関に出て靴を履き、携帯のタイマーをセットする。
そして、俺は走り出した。
外の空気は思ったより冷たくて若干後悔した。
それでも、俺は走る。
この時間に走るのは初めてだったけれど思ったよりは悪くなかった。
寒いという問題は有れど人が少なくて走りやすい。
昼頃の駅前は人が多くて敬遠するのだけれどこの時間なら走っていても人にぶつかる心配はなさそうだ。
トントントン
俺はしばらく気持ちよく走った。
駅前を走り、横断歩道を渡り、神社の前を駆け抜けた。
その間、誰ともすれ違わなかった。
…この時間なら俺と同じように朝早く起きてジョギングしている人くらいいると思っていたが思ったよりはいないものだな。
内心そう思いつつ俺はあまり気にせずに走り続けた。
トントントン
橋を渡り、隣町まで走った。
しばらくすると、どこからか同じような足音が聞こえ始めた。
トントントン
その音はまるで俺の後ろを着いてきているようだった。
俺は後ろを振り向くことができなかった。
しかし、すぐに気づいた。
その音は耳の奥から聞こえてきているようだった。
これは心音だ。
運動をするとたまに聞こえてくるもので以前にも聞いたことがあった。
だから、俺は気にせずにそのまま走り続けた。
トントントン
トントントン
橋を渡り、神社の前を駆け抜け、横断歩道を渡り、駅前を過ぎた。
その間、心音は絶えず耳の奥に響き続けた。
家の近くまで戻った時セットしていたタイマーが鳴った。
俺は徐々にスピードを落としやがて止まった。
トントントン
その間も耳には心音が響いていた。
...違う、これは心音なんかじゃない。
俺は、後ろを振り向く。
そして、
『次のニュースです。本日未明から佐伯修吾さん17歳が行方不明となっています。警察は行方を捜しており見かけた方は下記の番号までご連絡ください。』
心音 カザミタチカゼ @kazami314159
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