ふと死を想う、空に落ちる。

@kaedeko

五月

また散歩に行こうと思う。

前回、行ったときは適当にぶらぶら歩いてただけだけど、今回は違う。

目的地を決めて歩こう。

目的地はコンビニ

程よい遠さのところにあるローソンに行く。

道路沿いにまっすぐ行ったらすぐ着くんだけど、それだと面白味もないので遠回りして行くことにする。


車が通れないような細い道を行こう。

本日は晴天なり。

風が気持ちいい。

この前は結構暑かったけど、今日は風のおかげもあってかだいぶ涼しい。


なるべく人がいないような道を行こう。

小さな池が近くにある道や、所狭しと墓石が並んだ墓地が近くにある道。

子供の頃はこの池から妖怪が出てきて、池の中に引きずり込まれるんじゃないかとか、墓石と墓石の間から誰かがこっちを覗いてるんじゃないかとか、いろいろな恐ろしい想像をして避けてた道だ。

今では人を避けてこの道を歩いている。


この道を抜けると昔よく遊んだ公園に出る。

公園と言っても砂場や滑り台があるくらいで他には何もない。

子どもの頃よく遊んだ公園が、改めて見るとなんだか小さく感じた。

この公園の奥には薄暗い細道があって、この細道を抜けると土手沿いの道に出る。

これは、自分が子供の頃に見つけた秘密の抜け道だ。


細道を抜けて土手に出る。

何となく昔のことを考えながら土手沿いを歩いた。

子どもの頃は、大人がすごく嫌いだったな。

何かにつけて自分たちの邪魔をしてくる大人たちが

自分は絶対に大人にはなりたくなかった

大人になるくらいならその前にさっさと死んでやろうとさえ考えていた。

しかし、そんな勇気は持ち合わせていないので、二十歳を過ぎた今でもずるずると生きている。

しばらく歩いて橋まで来た。

コンクリート造りの小さなこの橋を渡った先に目的のコンビニがある。

この橋も子供の頃は恐る恐る渡ってたなと懐かしく思う。

今では別に怖くもなんともない。

ちょうど橋の中腹に来たあたりでふと橋下に目をやった。

橋下では大きな川が穏やかに流れ、その水面には青空と小さな雲たちを映していた。

まるで足元に空があるみたいだった。

ふと、今、この橋から飛び降りたら。

そうすれば、この美しい空に落ちて死ねるんじゃないだろうか。

子供という美しくて楽しかった時期を過ぎた自分は常にぼんやりと死を考えていた。

もし自分の人生を折れ線グラフで表したなら、自分の人生の最高到達点は子供だったあの頃にあって、それを過ぎた自分に待っているのは右肩下がりの人生だろう。

人生をピークで終わらせたい、楽しいままで終わらせたい。

桜がパッと咲いたかと思うと、風に吹かれてはらりと散るみたいに

潔く死にたい。


今ならそれができる。


橋の欄干を強く握りながら立っていた。


ふと我に返って、息をついた。

やめた


大きく深呼吸をして再び歩き始めた。


「花は盛りを見るべきものかは」とはよく言ったもんだと思う。

咲いた桜だけでなく、咲く前の蕾や梢にも魅力があって

たとえ風に吹かれて散った桜の花びらが地面の上で茶色く枯れていても

それでも、風情があってよいものだ

そんな言葉に救われたような気がする。


目的地はもう目の前。

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