第30話 相談

 放課後、俺と千春が帰ろうとしたところに露崎がやってきた。


「黒瀬君、一緒に帰ろう」


「ダメだ。千春と帰る約束がある」


「えー、じゃあ、一緒に――」


 そこに星野が割って入った。


「はいはーい、澪音は私と帰ろうか」


「梨奈、なんで邪魔するのよ」


「だって、私は幸せそうな千春を見ていたいんだもん。お昼はいいけど、放課後はダメってのがマイルール」


「そんなのに私が従う理由は無いし」


「澪音が全面的に戦うってのなら、お昼も反対するけど?」


「う……わかったわよ」


「ということで、お二人はごゆっくり」


 星野と露崎は去って行った。


「……じゃあ、帰ろうか」


「そうだな」


 俺と千春、二人で教室を出て、昇降口を抜けたときだった。


「千春!」


 そこにショートカットのスポーツ女子が居た。


「あれ? 柚希? どうしたの?」


「2人に相談があるんだけどさ……いいかな?」


「うん、いいよ」


 俺が考える間もなく千春が答えた。いや、俺も相談相手なんだけどな。


「じゃあ、どこか寄ろうよ」


 俺の意見は聞かれることもなく、三人で行くことになった。


◇◇◇


 俺たちが来たのはバスセンターのテラス。ここはカウンター席みたいに横一列だから女子二人が並んで座り、俺は千春の隣に腰を下ろした。


「ごめん、千春。せっかくのデートなのに」


「ううん、大丈夫」


 デートは否定しないのかよ。


「黒瀬もごめん」


 ショートカット女子が言う。


「それはいいが……君の名前を教えてくれ」


「え!?」


 ショートカット女子が驚く。


「柚希、というのは千春が呼んでたから知ってるけど」


 千春が呆れ顔でため息をついた。


「晴真ってほんとにハーレムの女子に興味無いんだね」


「当たり前だ。そう言ったろ」


「それにしてもねえ、柚希なんてうちのクラスの男子なら絶対知ってるはずだよ? もう二学期だよ?」


「仕方ないだろ。知らないんだから」


「はぁ……」


 だが、ショートカット女子は俺に答えてくれた。


「ウチは大丈夫だよ! 確かにそうだよね。今まで話したことも無かったし。ウチは西原柚希にしはら ゆずき、蓮司と同じく、バスケ部だよ」


「俺は黒瀬晴真だ」


「うん、知ってる」


「それで相談って?」


 千春が聞いた。


「実は……みんなに蓮司のところに戻ってきて欲しくて」


「柚希、お昼にもそう言ってたね」


「うん」


「どうして?」


「え?」


「だって、柚希にはチャンスじゃないの? 私たちが居なくなったんだから、蓮司を独占できるでしょ?」


「それはそうなんだけど……ウチ、なんだか寂しくて……」


「寂しい?」


 俺は不思議に思って聞いた。


「うん。だって、前はみんなでわいわい騒いでて楽しかったのにさ。今は不機嫌な蓮司とそこにべったりな美空ちゃんだけで、ウチが居ても蓮司は楽しくなさそうなんだもん」


「それはそうかもしれないが……」


 俺はイラだって聞いた。


「お前、何のために一条のそばに居るんだよ?」


「え? それはもちろん蓮司が好きだからだよ」


「だったら他の女子はいらないだろ」


「でも……寂しいんだもん」


 西原が視線を落とす。


「あのなあ、お前がハーレムに求めてるのは女子との交流かよ!」


「それも大事かな」


「だったら、部活でもしてろ!」


「もうしてるよ」


 あ、そうだった。西原はバスケ部だったな。


「と、とにかく、女子と交流したいだけならハーレムである必要は無いだろ。適当に集まってろ」


「それが出来れば苦労しないよ。ウチらは蓮司が好きで集まって、それで仲良くなったのに……」


「仲良く? 同じ男子を奪い合ってるのにおかしいだろ」


 もっと、ハーレムはギスギスしているはずだ。いつかの千春と露崎のように。あれ? 俺はハーレム主じゃ無いけどな。


「そうだけど……あの雰囲気はきっと千春が居たからだったんだと思う。千春は蓮司のことが好きなのに、ウチらを近づけてくれたし。だから梨奈や澪音が好き勝手やってもみんな笑ってられたし……ああいうのが良かったなって」


「アホか。お前はハーレムをなんだと思ってるんだ!」


 俺はつい強く言ってしまう。


「それは……」


「だいたいお前は一条が好きなのか?」


「当たり前じゃん!」


「嘘言うな、お前は一条のハーレムの雰囲気が好きだっただけだ。美少女の中に居る自分に酔っていたかっただけだ! 一条のことなんて好きじゃないんだよ!」


「違うよ! なんで、そんなこと言うんだよ!」


 急に西原は取り乱しだした。


「事実だからな」


「違うから! ウチは蓮司が好き!」


「じゃあ、独り占めできて良かったじゃないか。美空ちゃんは妹だから敵じゃないぞ。存分に一条を独占しろよ」


「そうだけど! ……そうだけど! 黒瀬なんて嫌い!」


 そう言うと、西原は急に立ち上がり、去って行った。


「もう……晴真、もう少し優しく言えないの?」


「無理だな。つい、熱くなっちまう」


「まったく……でもそういうところが……」


 言葉を濁す千春に思わず言ってしまう。


「好きなのか?」


「うん……って、何言わせるのよ!」


「アイタ!」


 結構強めのパンチだったぞ。

 でも、もう好きってことは認めてるって思ったんだけどなあ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る