第25話

「あら、私なら大丈夫よ」


よく響く、綺麗な声だった。


「いや、お前じゃなくて……」


そこまで言って、彼はハァッと大きなため息をこぼした。


「お前が握っているモノの持ち主サマのほうがぜんぜん大丈夫じゃないだろ」


ベンチソファが軋む音と、軽い金属音がカチャカチャと微かに聞こえてくる。

横に置かれた観葉植物の葉がガサガサと揺れ、向こう側にいる人物は相当慌てて動いているようだった。


「あらあら、ダメよ、そんなに慌てたら挟んじゃうわよ」


聞こえてきたのは、意外にも落ち着いている声。


「でもっ、こんなとこ見られたら、僕はっ」

「ダーメ、どちらにしても出さなきゃ入らないわよ。あなたのって、おとなしい状態でも立派なサイズなんだもの」


男性の慌てる声と、ふふ、と楽しそうに笑う女性の声が聞こえる。


「あとでちゃんと可愛がってあげるから、ここで大人しくしてなさい…………、あら、返事は?」


最後の方は、女性……なのか? と思うほどに低く、なかなかドスが効いた声だった。


その直後、微かに


「はい……」


と弱々しい返事が聞こえた。


「いい子ね」


満足げな彼女の声が聞こえたあと、水気のある口づけの音が休憩室内に響いた。

漂う淫靡な雰囲気に僕はどうしたらいいかわからず、戸惑いながら隣に立つ彼の顔を見上げた。

少しだけ高い位置にあるその顔には、僕ごときが読み取れるようなサインは出ていなかった。

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