第32話 学園へ向けて



レーツェの冒険者ギルドでの歓迎会から一夜明け、俺達は一度アルベルージュ家へ戻ることになった。まず、理由の一つがメルトステラ家御一行が今日帰る為。セラが帰らないと明言している以上、少しでも会っておくべきだと判断したのが1つ。

まだ10歳の子供だ、親御さんも心配するだろうし不仲でもないのだから出来る限り会っておくべきだ。親に甘えれる内に甘えるべき、それは子供の特権なんだから。

もう1つの理由がレーツェを拠点として活動するとちゃんと俺も報告してないからっていうのがあるな。もちろん、拠点として活動すると言っても数ヶ月に1回は帰るつもりでいるが俺も両親達には余計な心労はかけたくない。それに、新しく加わったルナとラピスを紹介したいという意図もあった。

あ、あとヴェルナーさんで俺達の事を試した事も言っておかないとな。昨日も歓迎会で話したけどホントに良い人だったぞ?それなのにあんな嫌な役押し付けて……俺が年齢通りの子供だったらどうするつもりだったんだって話だ。まぁ、その場合は冒険者になるのなんて早いと言われて終わりな気もするが。


まぁそういった理由からアルベルージュ家へと馬車を走らせていた。ちなみに、レイラは昨日も飲み過ぎてグロッキーだが御者として馬車を動かしてる。治癒魔法はかけないのかって?反省の意味も込めてかけていません。




馬車が家へ到着するとみんなが出迎えてくれた。両親とメルトステラ家の御一行も一緒だ。贅沢なお迎えだな〜、なんて思ってるとルナとラピスは驚いて固まってる。


「な、な、なんなのだ〜!これがノワの家なのだ!?おっきすぎるのだ!」


「……ノワが少しいい所のお坊ちゃんなのはレイラさんを見て何となく分かってた。けど、領主様の息子だなんて聞いてない。」


「りょ、領主様なのだ!?」


「2人とも言ってなかったか?俺はノワール・アルベルージュ。アルベルージュ伯爵家の次男だよ。ちなみに、ウチよりもセラの家の方が凄いぞ。」


「私はセラフィナ・メルトステラ。メルトステラ公爵家の末娘よ。」


「馬車に乗ってきただけなのにクラクラしてきた……」


「と、とんでもないのだ!そんな人達と知らず知らずにパーティー組んでたのだ!?というか、シロはなんでそんな平然としてるのだ!?」


「だって、私アルベルージュ家で居候させてもらってるし……」


「……シロが1番大物かもしれないのだ……伯爵家を居候先にする大物はいないと思うのだ。」


「私も自分でおかしいと思ってるけどやっぱりそうだよね……」


「ほら、着いたんだから馬車から降りるぞ。」


そういうと俺達は馬車から降りる。


「おかえり、ノワ。レーツェはどうだったかな?色々上手くいったようだけど。」


「お父様、いや、このクソ親父!ヴェルナーさんに迷惑かけてんじゃない!」


そういうと鳩尾へ腹パン1発ぶち込んでおいた。

ゴフッって言いながら泡吹いたけどしばらくしたらケロッと復活するだろう。伊達に剣聖じゃないからな。


「あらあら、ノワちゃんお父さんをイジメ過ぎちゃダメよ?これぐらいのお灸なら構わないけど。」


「お母様、ただいま帰りました。1日遅れてしまいすみません。」


「元気に帰ってきてくれるなら何も問題ないわ。あと、お父さんがヴェルナーさんに迷惑かけた話も聞かせてくれる?私からもお灸を据えないとダメそうだからね。あと、新しい子達も紹介してね?」


「わかりました、後ほどお伝えさせていただきます。」


「ノワール君、セラ、おかえり。私達が今日帰るからと帰ってきてくれたのだろう?感謝するよ。」


「いえ、むしろ1日遅れてしまいすみません。昨日のうちに戻れたら良かったんですが……。」


「いや、大丈夫さ。何よりセラの顔がイキイキしてる。楽しくやれてる証拠だろう。これからもよろしく頼むよ?」


「はい、お任せ下さい。」


「さぁ、ここでお話してても仕方ないですし、家に入りましょう。ランディ、お客様の案内お願いね?」


「かしこまりました、奥様。それでは皆さん、こちらへどうぞ。」


そういうとみんな家へと入っていった。





「す、凄いのです……これがお屋敷……広すぎるのです。」


「ね、僕もこんなに広いとは思ってなかったからびっくりだよ。」


「私も最初来た時ホント驚いたよ、びっくりだよね〜。」


セラは家族と話すという事で俺が軽く屋敷を案内していた。確かに、俺からしてもこの屋敷はデカい。ホント洋風の屋敷といえばこんな感じだよね〜という形がそのまま家になったって感じだ。


「こっちがホールで、こっちが食事を取るところ。あそこの部屋が厨房だな。」


「いい匂いがするのです……」


「ウチの食事はラピスの所とは毛色は違うけど美味いぞ〜、楽しみにしといてくれ!」


「楽しみにしとくのです!」


「そんな良い物食べ過ぎちゃうと舌が肥えすぎて大変な事になりそう……」


「それで陥落したのがシロだからな。」


「ち、違うもん!食事だけじゃないもん!」


「あー、衣食住全てで陥落したんだったな。」


「……ここの水準でなれたら後が絶対しんどいよ、シロ。」


「うぅ…分かってるんだけどね……」


「ここから庭に出れたりもするぞ。」


「おっきいお庭なのです!」


「ここで俺はランディーと対人訓練したりしてるな。」


「そういえば、セラがこれから対人訓練を中心にやるって聞いたけどホント?」


「あー、そのつもりだ。今のままだと技術や身体の使い方が上達しないままステータスや強力なスキルを覚える事になってしまうからな。それは避けたいって事で対人訓練に比重を置いて活動するつもりだ。」


「でも、ダンジョンのモンスターとは勝手が違うんじゃない?」


「あぁ、実際そうだ。モンスターの方が大きいし、力に任せた攻撃なども多い。けど、技術的な事を上げるなら対人訓練の方が上がりやすいし、技術が上がればモンスター相手にも対処はかなり変わる。それに、モンスターで訓練させようにも良い相手が今の現状いないんだ。いきなり中級上位から上級以上のモンスターで訓練とかさせようものなら事故が起きかねないしな。」


「なるほど……だから対人訓練なんだね。」


「そういう事、学園入学するまでは訓練7割、ダンジョン3割の比重にして、入学するまでに全員上級職までは上げるつもりだ。」


「それでも上級職には上がれるんだ……」


「まぁ正直半年あれば上級職より上も目指せるんだが身体の方がついてこないだろうからな。ステータスを上げても使いこなせないと意味がないしな。」


「上級職より上……そんなに凄いジョブに半年……」


「ホントは更にその上があったりするんだけどな。まぁまだ先の話だ。技術を磨くのが先だな。」


「分かったのだ!頑張って技術を磨くのだ!」


「あぁ、ラピスとルナには特に頑張ってもらわないとな!前衛は技術の差が特に顕著に出るからな!」


「……僕も頑張るよ、強くなる為にも。」


「その意気だ!もちろん、後衛も技術は磨いてもらうけどな。前衛が崩れたからすぐやられましたじゃ話にならないからな!」


「うぅ…不安だけど頑張ります……」




それから俺達はセラの家族を見送ったり、夕食の場でラピスとルナの紹介。レーツェでどの様な事があったか、これからレーツェをしばらく拠点にして活動する事を伝えた。

両親も冒険者をやってた事があるからだろう、そこまで心配されずに快く送り出すよと言ってくれた、ありがたい。

ランディーからは坊っちゃまと手合わせする機会が減って残念ですと独特な悲しみ方をしていたな。

ちなみに、同行する従者はレイラとセラの専属メイドであるミレイになった。ミレイはセラの身の回り兼護衛として残っていた。前回レーツェへ行った時も着いていきたかったそうだが、まだ病み上がりだったという事で留守番をしていた。セラに着いていける事で嬉しそうだ。

明日から本格的に訓練も始めることに決めた、学園入学まであとはひたすら頑張るのみだ!


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これで第1章は終了です。

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ダンアラ-ダンジョンが沢山ある異世界を楽しむ全1プレイヤー! あんこ @ToMo3987

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