第30話 vsリッチ(ズッ友)



「よし、ボス部屋までついたわね。」


「特に苦戦も迷う事もなく来れたから早いです。」


「ん、確かにかなり早い……スムーズで疲労も少ない。」


「ラピスはまだまだ元気いっぱいなのだ!」


「よし、じゃあボスの特徴や弱点なんかについて話していくぞ。よく聞いててくれよ。」


「「「「はーい。」」」」



ということでなんの見所もなく、遺跡ダンジョンの最奥までたどり着いてしまった。


俺は他のメンバーにボスの特徴や弱点について話す。ボスはリッチ、ゲームで定番のボスだ。

リッチというモンスターは魔法の攻撃力が非常に高い。また、色んな属性を多用してくるのでめんどくさい敵だ。

ただし、それは複数同時に現れたり、前衛となるモンスターが居ればの話だ。上級ダンジョンからは雑魚として出てくるんだが、その時は厄介な相手ではある。だが、遺跡ダンジョンのリッチは単体。それに、純魔法職のようなスペックなので足は遅いし、防御力も大した事がない。


つまり……カモなんだな……ゲーム時代、中級下位のこのダンジョンが人気のあった理由。それは、かなり周回がしやすいから下級職のレベリングに便利だったのも理由の一つなんだ。エンシェントウルフの次の集会場所として俺も重宝していた。

あと、中級下位から下級職から中級職にランクアップする為のランクアップチケットが落ちるからそれを集めれるのもいい。

そういった感じの事をみんなに伝えた。


「つまり、敵は弱いってことね?」


「あぁ、攻撃力は高いがそもそもみんなの集中砲火を耐えれるかが怪しいな……」


「って事は周回しまくるってことね?」


「その通り、道中で石ころを拾ってきたからこれを投げ入れて復活させまくるぞ。」


「分かったわ。」


「って事で、みんな行くぞ〜。周回開始だ。」


そう告げると俺達はボス部屋へと入った。



ボス部屋へ入ると中央から黒いモヤが現れる、そしてそれが形を成していく。見た目は黒いローブを纏った魔道士、手には魔水晶を抱えている。ただし、ローブから覗く顔は片目が潰れ、もう片目が真っ赤、皮膚は爛れ落ち、顔半分は骨が顔を覗かせる。ローブを纏っていない身体の部分も似たような感じだ、あれがリッチ。


「油断だけはするなよ、速攻決めるぞ!」


「分かったのだ、『竜の咆哮』、『ヘイトスラッシュ』!」


「魔法職ならアンデット系でも効きやすいでしょ、『弱点看破』、『アサシネイト』、『双刺突』」


「グギャァァァ!」


ラピスがヘイトを取り、ルナが切り込みダメージを与える。やっぱり防御力が低いから簡単に押し込めるな。そう判断した俺は更に指示を出す。


「今回はシロはバフを使わなくていい、攻撃だ!セラも俺も攻撃だ、ダウンは狙わない。一斉攻撃で倒しきれる。」


「分かったよ、『聖天の光』、『ホーリーレイ』、『炎舞、落陽』!」


「『レクイエム』、『セイクリッドシャイン』、『ファイヤーバレッド』!」


「『剣舞・一閃』、『ブレイバースラッシュ』、『セイクリッドクロス』!」


3人の攻撃が直撃する。すると、身体が真っ二つになり光へとなり消えていくリッチの姿を確認できた。


……やっぱり歯応えが無さすぎたな。そう思うと同時に素材と赤箱が出てくる。

赤箱万歳!赤箱万歳!


「ホントに手応えがなかったわね……あと赤箱だわ。」


「赤箱いいですね、杖とか防具とかレアなアイテムとか。何が出るか楽しみです。」


「ん、楽しみ。」


「早く開けるのだ!」


「まぁ周回してたらかなりの量の赤箱手に入るだろうしサクッと開けちゃうか。じゃあ、俺が今回は開けるぞ〜」


そういうと赤箱をパカッと開ける。中にあったのは……


「おぉ、お目当てのランクアップチケットだな。それが3枚と……こっちはアクセサリーか。MPと魔法の攻撃力をあげる指輪みたいだな。これは……セラが合いそうだけどどうだ?」


「えっ!?こ、婚約したからってそんな大胆な……」


「要らないなら俺がつけようか……」


「いるいるいる!お願い!」


「分かったって大丈夫だから。ほいっ、これね。」


そういうとセラに指輪をつける。真っ青なサファイアを思わせるような宝石の着いた指輪だ。それを見たセラが頬を赤らめる。


「えへ、ありがとうノワ!」


「……おう。」


んー、なんか久しぶりにこの破壊力ある笑顔を向けられた気がする……


ちなみに、そんなやり取りをしてる後ろでは「セラとノワは婚約してたのだ!?」、「まさかそこまで進んでいたとは……」とラピスとルナがびっくりしていた気がするが気の所為だろう。


「よし、じゃあこれから周回するぞ。簡単に倒せるからテンポよく行く。宝箱や素材回収も手早くやってく。いくぞ!」


「「「「おー!」」」」


という事で俺達はボス周回を始めた。



「ランクアップチケットが15枚にセラの防具になる古の魔道士シリーズ、その他にもアクセサリー類や諸々手に入ったな。」


「今回は何体倒したのかしらね……」


「ですね……ただ、倒しまくったお陰で全員中級職になれそうですね。」


「正直、ここのボスは強くないけどこんなに倒しまくるとは思ってなかった……」


「さ、流石に疲れたのだ……」


リッチは周回しやすいからな、エンシェントウルフよりもテンポよく周回出来た。素材も宝箱産のアイテム類も大量だ。

前もって伝えていたジョブをルナもラピスも全部カンスト出来たみたいだしな!これは……入学前に全員上級職までは確実にいけるな。


ただ、入学前にそれ以上あげるのは気乗りしない。やっぱりジョブやステータスに振り回されない技術を身につける方が最優先だし、何より上級職以上になってしまったら国からの要請だとか、研究とか面倒事に巻き込まれる。入学した直後からそんなのに巻き込まれまくるのはごめんだしな。

とにかく技術、俺で言うプレイヤースキルを磨いてもらう為の訓練メニューも考えないとな。楽しみだし、腕がなるぜ!


「よし、みんな今日の所は周回終了だ。ギルドに戻って素材系や不要なアイテムの売却とかしつつ、今後の方針とランクアップを済ませてしまおう。それが終わったら、今日はルナとラピスの歓迎会として美味い物たらふく食べるぞ!」


「そうよね!歓迎会大事だわ!」


「賛成です、いっぱい一緒に戦ったから忘れてましたけど今日初めましてでした!」


「扱きの歓迎はもう受けたけどね……」


「美味しい物楽しみなのだ!ウチの店来るといいのだ!この街一番の料理なのだ!」


「〈竜の火酒〉は料理も美味いのか、なら決まりだな!さっさと面倒事済ませるぞ!ちなみに、費用は全部俺持ちだから気にせず飲み食いしろよ。」


「「「「おー!」」」」


そんなやり取りを済ませて俺達はダンジョンを後にした。リッチが泣いてたような気がするが……気のせいだろう。

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