第29話 隠し扉と赤箱




セラと話して不安要素もだいぶ減った。もちろん、対人戦と対モンスターは勝手が違うので不安な部分がない訳では無い。

だが、慢心せず技術を磨くという点においては対人戦は優れている。これはゲーム時代でもそうだった。

そもそもいくらステータスが上がろうと、強力なスキルを使えるジョブに就こうと、どれだけ良い武器や防具を装備しようと土台であるプレイヤースキルが伴ってなければ意味がなかった。攻撃も当てれなければ意味がない。宝の持ち腐れになってしまうんだ。


VRMMO、特にダンアラでは特にそれが顕著だった。従来のゲームとは違って、能力やスキルでゴリ押しが出来ない。自動で攻撃が当たる訳じゃないし、攻撃も人によっては簡単に弾いたり出来る。


中にはチートを使って、オート操作やセミオート操作を使ってる連中もいたが中級者レベルからすればカモもいいとこ。フェイントに簡単に引っかかるのもあってVRでのチートは流行らなかった。すぐにBANされてたのもあるが……

逆に言えば、プレイヤースキルが伴えばステータスに差があろうと勝てる可能性があるのもVRの醍醐味とも言える。もちろん、差があればある程難易度は跳ね上がるけどね。


まぁ、そういう訳で俺としてはレベルやジョブも大切だがメンバーにはプレイヤースキルを上げて欲しいという訳だ。特に学園に入るまでにある程度強くなってもらう。そもそも、ある程度動けるようになっておかないと上級や超級ですらクリアを目指すのは難しいだろうからな。



それからしばらく、俺達は遺跡ダンジョンを進み続けていた。今は18階層、もう少しでボス部屋だな。10層を超えてからスケルトンソルジャーの他にスケルトンアーチャーやスケルトンメイジといったスケルトン系モンスターも増えてきた。

まぁ、シロの『聖天の光』やセラの『レクイエム』が特効を持ってるから簡単に消し飛ばされていった。

さて、遺跡ダンジョンというだけあってもちろん隠し扉が存在していて隠しアイテムがある場所がある。俺達はそこに向かっている。(俺がこっちの方が気になると誘導してるんだが。)

ここに、しばらくの間使えそうなシロの防具一式があるから、それを取りに向かっているんだ。


「んー、ルナ。この辺の壁に違和感を感じるんだが隠し扉や隠し部屋なんかあったりしないか?」


「ん、ちょっと確認する。」


「頼んだ。」


「『ソナー』……ホントだ。そこの突き当たり、あそこに隠し扉がある。よく気付いたね、僕でも最初は気づかなかったのに……。」


「まぁ、勇者の直感ってやつかね?」


「ノワ勇者っぽくない。ちょっと胡散臭い。」


「え、酷くない?」


ちなみにダンジョンに潜り始めてしばらくしてから、セラもシロもノワって呼んでるからと俺の事はみんなノワ呼びで決まった。なんか仲が深まったみたいでちょっと嬉しい。


「ん、罠がある可能性もある。僕が最初に開けるからみんな周囲を警戒して。」


「「「「了解!」」」」


「ん、開ける。」


廊下の突き当たりに見える壁、それをルナがゆっくり押すと壁が回転する。忍者屋敷の扉みたいでテンション上がる!


「……敵や罠はないみたい。小部屋になってて中央に赤の宝箱がある。」


「え!赤箱ですか!やりましたね!」


「赤箱はテンション上がるのだ!何が出るか楽しみなのだ!」


「どんなお宝が入ってるのか楽しみね!」


「よし、開けたい人いるか〜」


「……じゃあ私が開けたいです!」


そういうとシロが立候補した。何か感じ取ったのかね?


「お、じゃあ今回はシロが開ける番にしようか。みんなもそれでいいか?」


「ん、宝箱に罠は見当たらなかったから誰でも開けれる……ボス周回で何個か開けたから僕はいい。」


「ラピスも装備揃ったから満足したし、譲るのだ!」


「私も大丈夫よ、シロに開けてもらいましょ!」


「よし、決まりだな!じゃあ、シロ開けてみてくれ。」


「分かりました……じゃあ、いきます!」


そういうとシロは宝箱の前に膝をついてそっと宝箱を開けた。中から出てくるのはお目当てにしていたシロ用にピッタリの防具一式。


「これは……防具一式ですかね?」


「それはフェアリーダンスシリーズだな。舞系のスキルとバフ系のスキルを強化してくれる防具だ。今のシロにピッタリの防具だな。」


「シロちゃんによく似合いそうね!」


「ん、薄い青を基調としたパステルカラーのフワッとした感じがシロによく似合いそう。」


「かわいいのだ!絶対似合うのだ!」


「えぇっと……私が貰ってもいいのかな?」


「もちろんだ、シロが是非使ってくれ!」


「わ、わかった、大事に使わせてもらうね!」


「シロちゃん、ここで装備してみてよ!」


「じゃあ、装備が終わるまで俺は外で待ってるから終わったら呼んでくれ。」


「分かったわ、覗いちゃダメよ?」


「そんな事しません。」


そんな事したらせっかく作ったパーティーに不破が生まれるかもだからな。それに、10歳の子供の着替えを覗くとか色んな方面に不味い。


「お、終わりました!どうでしょう?似合ってますか?」


そう問われると同時に振り向くと、そこには薄い透明感のある青をベースとしたパステルカラーで少し扇情的とも言える踊り子がよく着ているような服装をしたシロが立っていた。


「よく似合ってるな。フェアリーダンスシリーズと言うだけあって、幻想的な踊り子のような妖精と言われても納得出来る防具だ。」


「ホントシロちゃんによく似合ってるわ、素敵!」


「これは想像以上、僕もダンジョン産の防具欲しくなった。」


「とても良いのだ!」


「あ、ありがとう……想像以上に褒められて恥ずかしくなっちゃったよ……あはは……」


「フェアリーダンスシリーズは結構良い防具だったはずだ、大事に使ってくれよ!」


「うん、大事にするよ。」


こうして、シロの防具一式が揃った。ラピスは揃ってるからあとは、セラとルナの防具だな。中級の間の防具揃えてやらないとな。


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