第28話 提案



何回か周回すると伝えていたのでそのままエレオスと何回か連戦する。

最初その様子を見た時はルナもラピスもポカーンとしてた、まぁこの世界の常識がひっくり返ったんだから当然と言えば当然か。


そして、連戦してもらったが2戦目からは俺は指示も戦闘にも参加せず観察していた。だが、4人でもエレオスを簡単に倒しきってしまう。

何度も言うがまだ10歳の子供、そんな子達がたった4人で簡単に3m弱ある鎧騎士を倒してしまう光景は不思議な光景とも言える。

まぁ、これは1戦目を見ていれば分かっていたことだ。まだまだ、立ち回りも立ち位置もスキルや魔法の差し込みも甘い所はあるが……それでも勝ててしまう。良くない成功体験だ。


もちろん、特別危険に晒したい訳でも怪我をして欲しい訳でもない。

だが、この子達は天才なのだろう。淡々と倒せてしまっている。本来なら下級職なら苦戦しても不思議じゃない敵をあっさりと屠るのだ。

だが、天才ゆえに才に胡座をかいてもらっては困るし、勿体ない。

これはダンジョンから帰ったら荒療治が必要かもしれないな……そう思いつつ何度目かのエレオスを倒し、赤箱からラピスに合うだろうと思っていた装備一式がドロップしたのを確認してから、次の階層へと俺達は向かった。



「見て見てなのだ!エレオスの装備一式カッコイイのだ!」


「えぇ、よく似合ってるわね!」


「うん、ラピスかっこいい。僕も装備欲しくなる。」


「だねぇ、ラピスちゃんの喜び方見てると私も装備欲しくなってきちゃった!」


「今は装備黒いけど、防具屋にいけば色も変えれるらしいからラピスの好きな色にするといいと思うわ。」


「そうなのだ?ラピスの好きな色にするの楽しみなのだ!」


私達は難なく、遺跡ダンジョンのフロアボスに勝って更に先へ進んでいた。2戦目からはノワの力を借りなくても比較的あっさりと勝つ事が出来た。

今日から加入したルナとラピスの動きも悪くない。浅めの階層で慣らしたからか連携もそれなりにしっかり取れる。この調子ならあまり苦戦せず中級下位の他や更に上のダンジョンもクリア出来るだろうと確信出来た。


だが、一つだけ気になるのがノワだ。あのボス戦以降口数が少し減って考え事をしてるような顔をしている。


正直ノワの能力は非凡だ。私達もそれなりに才能はあるだろうが、ノワのそれは別格だ。

彼は、ステータスの恩恵を得ていない時から非凡な力をこれでもかと見せてきた。特に私は、目の前で助けられた事から心酔していると言っても過言じゃないかもしれない。

それに、彼は知識も豊富だ。私達が全く知らない知識を備えている。

勇者を覚職したからかな?なんて言っているがきっとそうではない。ただ、余りにも説明がつかないのでそこに関しては考えるのをやめた。つついても、きっと彼は答えてくれないだろうから。


ただ、そんな彼が少し不安そうに考え事をしている。正直何を考えているのか想像がつかない。考えて分からないならどうするか?直接聞くしかない。ということで、少しノワに近づいて耳打ちするように聞いてみた。


「ねぇ、ノワ。さっきから考え事しているようだけどどうしたの?」


「セラ?顔に出てたか?」


「えぇ、気づいたのは私だけみたいだけどね。」


「……そうだな、セラ的に今のパーティーどう思う?」


「どう思う、ね。」


なるほど、どうやら私達の事で悩んでいたみたいだ。


「そうね、連携もそれなりに取れてるし、ルナもラピスもセンスがあるのかしっかりと役割をこなす事が出来てるし順調だと思うわ。ボス戦も苦戦せず難なく勝ててるし。」


「そうだよな……みんな優秀過ぎるんだ……」


この言い方だと優秀過ぎるからダメだと暗に言ってる気がするけど、どうしたんだろうか。


「優秀過ぎる、だから良くないってことかしら?」


「……まぁ、端的に言えばそうだ。中級中位位までならなんの問題もなく勝てるのは間違いない。」


「なるほど?でも、それじゃダメってことね?」


「そうだ、今の状態だと自分達より同格もしくはそれ以上の敵が来たらあっさりやられる。

いや、なんならワンパターンでの攻略に慣れきってそれで倒しきれない、もしくは効かなかった場合、間違いなく対応が後手に回る。後手に回るだけならまだいい、けどそれで後衛がやられたら立て直せるか?と言われると恐らく無理だ。

もちろんパーティーとして結成したてだ。焦り過ぎじゃないかと思うかもしれない。けど、ここまで優秀なメンバーが揃うと慢心や油断は早くなる。」


「なるほど……優秀すぎるが故の弊害というわけね、不測の事態に陥らない、挫折を知らないからこその脆さが出ないようにしたい。つまりパーティーとしての対応力、地力を上げたいという事ね?」


「そういう事。それを早い内に体験出来れば良いけど、このパーティーだとダンジョンでそれは難しい。かと言って中級上位や上級に入ってからだと、下手したら取り返しのつかない事故に繋がったり、変に引きずったり迷走する可能性もある。それは避けたい。」


「確かにね……多くの人は下級ダンジョンでそういった事に陥ると聞くものね。納得といえば納得よ。」


「ただな……挫折……どうすれば地力を上げることができるか悩んでたんだ。」


「それで難しい顔をしてたのね……ノワと対人戦すればいいんじゃない?ノワ以外のパーティーメンバー対ノワで。貴方指導もできるし、私たちにあっさり勝つでしょ?」


「それだ!モンスター戦ではないから少し勝手は違うかもしれないが、それが一番効率が良さそうだ。他にも何人か高ランクの冒険者に頼むのもいいかもしれない……」


「思いついてなかったのね……まぁ問題を解決出来たようで良かったわ。私もこのパーティーのサブリーダーだからね。」


「あぁ、ありがとうセラ。最高だ、セラを選んでよかった……」


「うぅ……何でそういうこと簡単に言うのよ……バカ!」


「褒めただけなのに怒られた……解せぬ。」


こうしてパーティーとしての今後の方針も決まり、最下層のボス部屋を目指して突き進んだ。

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