第22話 追加メンバーとパーティーランク



さて、俺達のパーティー名が無事に決まり正式に冒険者として登録される事が決まり、その上でギルドマスターであるヴェルナーさんとその秘書のアノンさんという心強い味方も手に入れる事が出来た。

だが、俺が今日ここに来た目的はまだまだ沢山ある。それを達成していかないとな。

素材の買取や昇格試験は最後に回した方が段取りとしてもよさそうだ、そう考えた俺は募集するパーティーメンバーについて聞いてみる。


「ところで、今日の目的は複数あるのですがその内の1つにパーティーメンバーを増やしたいというのがあるんです。アノンさんにはお伝えしましたが、俺達のパーティーにはあとタンク系と斥候系のジョブのメンバーが欲しいと考えています。」


するとヴェルナーさんは怪訝そうな顔を向ける。


「タンク系と斥候系か……並のタンクならノワ君の足元にも及ばなさそうだけど?」


「あー、俺は遊撃として万能に伸ばしていくつもりです。元々タンクは本職じゃないんですよ。本職のタンクがいるなら、敵を分断したい時にサブタンクとして動ける様にぐらいにしか考えてません。」


「それはまた……万能に伸ばすとなると器用貧乏に陥りやすいというけど大丈夫なのかい?」


「その辺は抜かりないので心配無用です。」


「確かに、君を見てればそれは杞憂そうだね……

あと、斥候役も君がいれば問題なさそうと思ったけど……募集してるということはタンク同様完全に遊撃に専念するためって事だね?」


「はい、その通りです。それで、良い人はいますか?別に強くなくても良いんです、向上心があれば。出来れば覚職したての子の方が好ましいですけどね。先入観も持ってなくて擦れてないですし、育てるのは得意分野なので。」


「なるほど……これだけ強力なジョブや未知のジョブに就いてることから想像してたけど……その2つにもアテがあると言った様子だね?」


「……本来ならはぐらかすとこですがヴェルナーさん達なので正直に話すとその通りです。」


そういうと溜息をついてヴェルナーさんは天井を見上げる。向こうでサービス開始直後でまだまだジョブ開拓が進んでない時の俺達みたいだな……気持ちは分かる。

そんなまさか……って感じだよね。


「……ある程度候補はいるとは思うけど覚職したてとなるとまだ本格的に活動してない子達も沢山いるからどうしたものか……」


そんなやり取りをしていると横からアノンさんが声をかけてきた。


「少しよろしいでしょうか?私には年の離れた妹がいるんですが、今年覚職しまして斥候系のジョブに就きたいと言ってるんです。ノワールさん達が良ければ紹介したいと思うんですが。」


「アノンさんの妹さんですか!」


なるほど、この世界である程度自力で上級職のスパイマスターまで辿り着いた人の妹か。見込みがあるな。

それに、協力してくれる冒険者ギルドの身内を強化する事も出来る。なかなかいいかもしれない。

レーツェの冒険者ギルドには今後長い付き合いになるし、お世話になる。ただでさえ、手を煩わせてるんだから還元しないといけないしな。


「分かりました、もちろん顔合わせが必要だと思いますが妹さんが良ければ是非お願いしたいです。」


「ホントですか、妹も喜びます。妹の名はルナです。無表情な所もある子ですが可愛い子なのでよろしくお願いします。」


という事で斥候系のメンバーほぼ確保!またメンバー女の子でいよいよパーティーがハーレム化してきた気もするが……まぁそんな事気にならないぐらいビシバシ扱いて偉業立てまくるから気にしても仕方ない!



あと、言い訳みたいになるけど、この世界の仕様的に女の子の方が基本的にはジョブに恵まれてるからな……MMOあるあるなんだけど女の子のスキン系はかなり力を入れてるゲームが多い。ダンアラもその例に漏れずな訳で。

女の子のスキンを使ってもらう為に女の子限定の強力ジョブも追加しようって感じで運営は動いてたからな……その結果ギルド組んだらメンバー8割女性キャラってのもザラにあったな…自分でキャラメイク出来る仲間キャラも女の子一択って言われてたし。

それこそ、シロコの現状のジョブだってそうだ。狐人族で白毛、その上で性別は女じゃないと神獣の子やその上のジョブの条件を満たせない。巫女とか女性限定だったりするからね。



閑話休題



という事で、あとはタンク系だけだな。ホントはタンク系でこういう子がいいってのは明確にあったりするんだけど……ゲームならキャラメイクでサッと仲間に出来るけどリアルだと遭遇出来るか分からないんだよな……ダメ元で聞いてみるか?聞くだけタダだし。


「ヴェルナーさん、これはダメ元なんですけど竜人族。ドラゴニュート達の知り合いとかいたりしないですか?」


「竜人族?いますよ。」


「そうですよね、いないですよね……え?」


「現役の頃のパーティーメンバーに竜人族がいましてね。その人の子供が今年覚職だったはずです。」


「マジですか!?それは是非紹介して欲しいです!」


「誰でもいいと言ってた方とは思えない食いつきですね……」


「なかなか出会う事が出来ないと聞いていたので半ば諦めていたんですよ……でも、チャンスがあるなら飛びつきますよ!」


「分かりました、では明日にでも紹介出来るように調整しましょう。」


「明日ですか?急な誘いなのに日程は明日で大丈夫なんですか?」


「えぇ、問題ないですよ。だってギルドの向かい側の酒場、そこを経営してるのがその竜人族の家族なんですから。元気一杯のいい子なのでオススメできますよ。」


「……じゃあ、明日でお願いします。アノンさん、妹さんも明日という事で大丈夫ですか?」


「分かりました、伝えておきます。」


……灯台もと暗しとはまさにこの事。

まさか、ギルドの向かいの酒場の切り盛りしてるのが竜人族だなんて誰が思うんだよ……普段なかなか街中にはいつかない。山奥で一族ごとに過ごしてる事が多くて一族内でパーティーを組む事が多いって設定だったじゃん……改めて例外もあるし、ここは現実なんだと痛感することになった。

まぁ、いい方向に転んだから良かったんだけど。


「ノワ、なんで竜人族の子がいいと思ったの?」


「私も気になります。」


これまでやる気があればいいと言ってた俺が異様に食いついたからなのか疑問に思ったセラが聞いてくる。気になっていたのはシロも同じようだ。


「竜人族はまぁ知っての通り肉体的に優秀で強くなりやすい傾向がある。あと、竜人族にしか就けないジョブがあるんだよ。それが強いからパーティーメンバーに欲しいと思ったんだけど、基本的に山奥にいる種族だからな。会えないと思っていたんだ。」


「なるほどね、なんで貴方が竜人族のジョブまで知ってるかはツッコミを入れた所で無駄かしら?」


「うん、無駄だね!」


「す、清々しすぎます……」


そんな訳で無事パーティーメンバー候補は出揃った。あとは口説き落とすだけだな!

よし、あとは昇格試験と素材の買取だ。


「ヴェルナーさん、最後に昇格試験と素材の買取をお願いしたいんですけど大丈夫ですか?」


「はい、大丈夫ですよ。まず、昇格試験の内容ですが……まだ貴方達が優秀なジョブに就いてるとはいえ研鑽が必要だろうと思い難しめの課題を設定しました。」


「なるほど、望むところです!」


「では、その課題ですが荒野ダンジョンのボス、エンシェントウルフの素材を3体分でお願いします。下級ダンジョンでも難しいと言われてるボスです、油断すると怪我にも繋がるので気を引き締めて頑張ってくださいね!」


「……エンシェントウルフですか?……一旦考え直しませんか?」


「?貴方達なら確かに時間はかかるかもしれませんが大怪我を負う事もなくクリア出来そうですが……」


「……だって、ねぇ?」


「……ええ、そうね?いや、この際それもいいんじゃないかしら……」


「で、ですね……」


俺たちは3人で顔を見合わせる。エンシェントウルフ狩りまくったばっかりなんだよ……確かに下級ダンジョンの中だと難しい部類だけど初試験こんなに早々に終わっちゃっていいのかと俺達は思ってる訳だ。

まぁ、こうなった以上は仕方ないか。


「分かりました、所で今この場で昇格試験クエストを受けたという認識で大丈夫ですか?」


「はい、その認識で大丈夫ですよ。」


あー、言質取れちゃったよ。ヴェルナーさんからしたら疑問しかないだろうけど仕方ない。

そう思いつつ、俺はアイテムボックスからエンシェントウルフの素材をこれでもかと出す。


「……エンシェントウルフの3体分の素材+買取をお願いしたいエンシェントウルフの素材です。ここに出してるのは合計120体分ですかね。なんか……すみません。」


それを見たヴェルナーさんは顎が外れそうなぐらい唖然としてるし、アノンさんは顔を背けて肩を震わせてる。めっちゃツボってて可愛い。


「……数日で有り得ない程レベルを上げてる時点で色々想定しておくべきでしたかね。確かにエンシェントウルフの素材です。貴方達グリードをD級パーティーだと認めましょう。」


「ありがとうございます。」


「アノンさん、貴方もいつまでも笑ってないで……他の職員が対応出来ないので素材の買取などは貴方がメインで行うのですよ?」


そういうとアノンさんはピタッと笑いが止まる。それと同時にずんずんヴェルナーさんに歩いていき、肩を掴んだ。


「……マスター?私一人で今後これだけの量捌くのは無理です、絶対にこれからも増えるの間違いないですし。という事でお手伝いお願いしますね。」


「……分かりましたよ。」


ホント、ヴェルナーさん何から何まですみません。



しばらくの間素材の鑑定などをしてもらい、報酬を受け取った。初級ダンジョンのボスとはいえ数はかなり狩ったから報酬も結構美味しい。エンシェントウルフの毛皮は装備に使うだけじゃなく、普段着る用のコートに加工されたりもするから単価も結構いいんだよね。

素材はまだまだあるんだけど、鑑定や素材を捌くのに大変だと思ったから小出しで出すことにした。ゲームだとその辺もまとめてすぐに売却出来るけど、こっちでは違うからね。


これで今日の予定は終了だな。


「ヴェルナーさん、アノンさん今日はありがとうございました。今後もよろしくお願いします。」


「えぇ、こちらこそよろしくお願いします。貴方達の活躍楽しみにしてます。とりあえず、また明日にでも。顔合わせはまたこの応接室を使いましょう。」


「何から何までありがとうございます。では、失礼しますね。」


お礼を告げて応接室を出て、そのまま冒険者ギルドを出る。

冒険者ギルドの前の酒場、あそこに竜人族がいるんだよな〜……そう思いながら少し眺めるとジョッキを片手に持ち、もう片方の手で肩を組む竜人族の男。その男と同様に肩を組み、完全に出来上がった状態のレイラを見つけて俺は溜息をついたのだった。

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